2022.04.28
多施設共同研究“AMPLIFiED Study”の成果が『Journal of the American College of Cardiology』にオンライン掲載(2021年11月8日)され、同冊子版の11月16日号のトップに掲載された。
この研究は三重大学大学院医学系研究科先進画像診断学の北川覚也教授、同循環器・腎臓内科学の土肥薫教授らの研究グループが推し進めたもので、三重大学のほか、東北大学、愛媛大学、高崎総合医療センター、神戸大学、済生会松山病院、 鹿児島医療センター、北京協和医科大学の参加によって生まれた成果である。
安定冠動脈疾患に対する画像診断には、冠動脈CTによる狭窄・プラーク評価と心筋血流イメージングによる心筋虚血評価の 2 つのアプローチがある。冠動脈 CT の方がより直接的な診断を下せることや実施可能施設が多いことなどから、最近は冠動脈 CTが優先される傾向にある。
しかし、冠動脈CTは非常に高い狭窄検出感度を有する一方、陽性的中率はそれほど高くないため、侵襲的冠動脈造影検査の適応決定に用いると、軽症の冠動脈疾患患者に対するカテーテル検査が増加する可能性がある。
そのため、冠動脈CTで有意狭窄が疑われる場合には、心筋虚血を引き起こすほどの狭窄かどうか(血行動態的重症度) を負荷心筋血流イメージングにより評価することが推奨されている。
虚血評価には、心臓核医学検査やカテーテル検査を必要としてきたが、心臓核医学検査は 4時間を要し、また心臓カテーテル検査は侵襲性が高いため、患者にとって負担が少ない冠動脈狭窄の血行動態的重症度の診断方法の開発が世界でも長く課題とされている。
今回の“AMPLIFiED Study”では、狭窄の有無診断を行う「冠動脈CT」と心筋虚血の評価を行う「Dynamic 心筋血流CT」を併用し、両者の結果を総合的に判断することにより、CT検査のみで治療の必要な冠動脈狭窄を正確に診断できることを実証した。
こうした “包括的心臓CT” 検査にかかる時間は静脈ルート確保を含めて平均約40分と、冠動脈CTのみを行う一般的な心臓CTと比べると、検査時間は約25分延長するという。したがって、検査にかかる労力も増えることになる。
その一方で、心筋血流イメージングを受けるために病院を再受診することに比べ、患者にとっての時間的なメリットは大きい。何より、患者負担が大きかった従来の検査から、低侵襲かつ一度の検査で適切な治療を開始できる検査法の意義は大きいと小誌は考える。
本研究に携わった研究者に“包括的心臓CT” に研究の意義、課題、今後の展開などについて伺うことができた。“包括的心臓CT”の普及への道を探りたい。
包括的心臓CTの撮影の基本的な流れ
参考:「包括的心臓CTによる慢性冠動脈疾患へのアプローチ」
https://www.eizojoho.co.jp/latestreport/12602
北川: Dynamic CT Perfusion を世界で最初に始められた城戸先生からお話しいただけますか。
城戸: 冠動脈CTは 1990年頃から研究開発がスタートしました。愛媛からは、私の前任の望月輝一教授がシングルヘリカルCTで心電図同期撮影を行うことで、冠動脈が見えることを世界で初めて報告されました。
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