核医学における物理工学の役割は? ―端的に言えば、これまではあまり役にたっていなかったのではないかと思う。せいぜい放射線や撮像原理の教育をしたり、医療機器メーカに人材を供給したり。しかし私は、物理工学はもっと核医学に貢献できると信じている。特に、いま物理工学がもっとも貢献できるのがPETであろう。
核医学診断の最大の特徴は、微量なバイオマーカーの体内挙動を非侵襲的に画像化できる点にある。被ばくするから「侵襲的だ」という声も耳にするが、被ばくが心配で飛行機にはあまり乗りません※という人に私はまだ出会ったことはない。
※FDG-PET検査1回の被ばく量は日米飛行機10往復程度
ただ、被ばく量は少ないに越したことはないし、より診断能を高めるためにも、投与した検査薬から体外に放出される放射線をできる限り多く診断に活かしたいと考えるのは自然である。
コリメータで大半の放射線をそぎ落とすSPECTに限界があるのは当然であり、核医学診断機器の進化の軸足はPETに移っている。
PETは、形態的な変化が表れる前の機能的な異常をいち早く捉えることができるが、何と言っても解像度が悪い。また、装置が大きくて、使える場所も限られている。
しかし私は、物理工学がこれらの課題を解決できると考えている。つまり、未来のPETは、もっと診断能が上がり、もっと幅広い診療分野で活躍しているはずである。
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