私は、診療放射線技師としてこれまで3つの病院で勤務してきました。それぞれの病院で得た経験は、今の私を形作る大きな柱となっています。
今回、私が歩んできた道をお伝えすることで、これから診療放射線技師として歩み始める皆さんが、少しでも未来に対して前向きに取り組めるよう、私の経験を共有したいと思います。
ただし、私の経験は決して唯一の答えではありません。これから皆さん自身が経験する日々の中で、自らの道を切り拓いてほしいのです。そのためのヒントやきっかけとして、私のこれまでのエピソードが役に立てば幸いです。
私が最初に就職したのは、老人医療に特化した慢性期病院でした。1987年当時、日本では老人医療に関する知識や技術はまだ発展途上でしたが、この病院は先駆的な取り組みを行っていました。
私がこの病院に惹かれたのは、院長の言葉でした。「これからの日本の医療は、老人医療が中心となる時代が必ずやってくる。しかし、その時には介護の現場で混乱が起こり、適切な人材も不足するだろう」との言葉が、私の心に深く残り、この病院で学ぶことを決めました。
この病院では、高齢者の認知症患者が多く、胸部X線やCT検査を行う際にも、患者さんとの接し方に工夫が必要でした。特に、認知症の方は検査の意図を理解しにくく、協力を得るのは難しいことが多々ありました。
私は一人ひとりの患者さんにじっくりと寄り添い、安心感を与えながら検査を進める方法を学びました。
慢性期病院ということもあり時間的に余裕もありましたので、内科の医師から腹部や心臓の超音波検査や胃や大腸のバリウム検査の手法を学び、脳外科や整形外科の医師からは直接、CT画像やX線画像の診断方法や疾患に関する知識を得ることができました。
これがきっかけで、検査前には検査の目的を知ること、患者さんのカルテやラボデータの情報収集をすることの重要性について学び、検査後もしくは手術後の患者さんの状態を把握することが、検査の最終ゴールであることも学ぶことができました。
また、この病院で特に印象深かったのは、終末期医療に携わった経験です。自宅で看取れない患者さんが多く入院しており、日々の業務の中で、命の終わりに立ち会うことも少なくありませんでした。
検査一つひとつが、患者さんにとってどれほど重要なものであるかを痛感しながら、心を込めて業務にあたりました。この時期に学んだ「患者さん一人ひとりに対する尊重と向き合い方」は、今でも私の医療に対する根幹を成しています。
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