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2020.09.17

順天堂大学、3次元オンライン診療システムを開発

  1. COVID-19(新型コロナウイルス感染症)
  2. オンライン診療
  3. パーキンソン病
技術開発・臨床研究順天堂大学大学院医学研究科神経学

順天堂大学大学院医学研究科神経学の服部信孝教授、大山彦光准教授、関本智子非常勤助教らの研究グループは、世界初となる3次元オンライン診療*1システム「Holomedicine(ホロメディスン)」を開発した(*同大学調べ)。

本システムは、遠隔地にいる患者の3次元動作情報を離れた場所にいる医師のヘッドマウントディスプレイ(HoloLens)上に投影し、患者が目の前にいるかのように診察できる診療システムである。

本システムを用いて評価したパーキンソン病*2の運動症状のスコアは、対面による評価と相関しており、対面診療の代わりとして評価に用いることができることが示された。

本成果はパーキンソン病のみならず、運動障害および神経疾患のオンライン診療に役立ち、ポストコロナを見据えた未来の医療実現の大きな一歩になる可能性がある。

本成果は国際科学雑誌Movement Disorders誌オンライン版(2020年9月14日付)に掲載された。

■本研究成果のポイント
・3次元オンライン診療システム「Holomedicine」を開発した。
・本システムによるパーキンソン病患者の運動症状の評価スコアは対面評価と相関があり、対面診療の代わりとなりうる。
・5GとAIを組み合わせることで、ポストコロナを見据えた未来のオンライン診療の実現につながる。

■背景
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、通院に伴う感染リスクを低減する必要性が急速に高まっている。

一方、パーキンソン病などの慢性疾患患者は専門医への受診中断により健康状態悪化のリスクがあり、感染拡大の状況下において、感染リスクを最小化しつつ安全かつ安心に専門医への通院を継続できる社会基盤の整備が急務である。

通院における感染リスクを低減する方法の一つに遠隔医療*3(テレメディシン;Telemedicine)がありる。

神経難病に対する遠隔医療技術として、ビデオ通話機能を用いた2次元のオンライン診療があるが、パーキンソン病患者の運動症状を医師が詳細に把握しにくいなどの課題があった。

そこで本研究では、実際に対面して得られる患者の運動症状を、遠隔地においても評価を可能にする3次元オンライン診療システムの開発に取り組んだ。

■内容
本研究では、遠隔地にいる患者を、マーカレス3次元モーションスキャナ(Kinect v2)を用いて、3次元動作情報をリアルタイムでスキャンし、離れた場所にいる医師のもとに3次元動作情報を複合現実(Mixed Reality)を実現するヘッドマウントディスプレイ(HoloLens)を介して再構築し、まるで患者が目の前にいるかのように診察できる双方向性3次元オンライン診療システム「Holomedicine(ホロメディスン)」を開発した(図)。

図:本研究で開発した3次元オンライン診療システム(Holomedicine) 上図:双方向性3次元オンライン診療システム。医師側(右写真)および患者側(左写真)は離れた場所にいる相手がヘッドマウントディスプレイを介して目の前にいるように映る。 下図左:3次元オンライン診療システムに用いたデバイス(HoloLensとKinect v2)。 下図右:3次元オンライン診療システムで得られた運動症状の評価値(横軸)と、医師が対面で評価した運動症状の評価値(縦軸)について、高い検者間信頼性(級内相関係数ICC)がみられた。

図:本研究で開発した3次元オンライン診療システム(Holomedicine)

上図:双方向性3次元オンライン診療システム。医師側(右写真)および患者側(左写真)は離れた場所にいる相手がヘッドマウントディスプレイを介して目の前にいるように映る。

下図左:3次元オンライン診療システムに用いたデバイス(HoloLensとKinect v2)。

下図右:3次元オンライン診療システムで得られた運動症状の評価値(横軸)と、医師が対面で評価した運動症状の評価値(縦軸)について、高い検者間信頼性(級内相関係数ICC)がみられた。

ホロメディスンとはホログラムとテレメディスンから命名している。

本システムではヴァーチャルリアリティ(VR)ではなく、現実とヴァーチャルを融合した複合現実を用いることで、患者も医師も、お互いのいる環境に相手が来て、対面しているかのように見ることができる。

また、音声通話機能も搭載しているため、本システムのみで診察を完了することができる。

今回、実際にパーキンソン病患者100名に対して、本システムを用いて評価したパーキンソン病の運動症状のスコア(UPDRS-III*4)と、従来の対面による評価による運動症状のスコアを比較したところ、級内相関係数*5で相関が高く、信頼性が高かったことから、対面診療の代わりとして評価に用いることができることが示された(図右下)。

以上の結果から、本システムは、運動障害および神経疾患を3次元かつ遠隔でとらえることができるため、パーキンソン病のみならず、ポストコロナを見据えた未来のオンライン診療の可能性を広げる大きな一歩になると考えられる。

■今後の展開
本システムは、5Gといった高速通信との併用で、患者は家にいながらにして、まるで病院の診察室に来たかのように診察をうけることが可能になるため、通院が困難な運動障害患者であっても、通院の時間や費用を軽減でき、不要な感染リスクを減らすことにつながる。

今後さらに、マイクロソフトの最新デバイス(HoloLens 2およびAzure Kinect)によるシステムの改良を行い、さらに精度を高める予定である。

本研究成果をもとに、診察時の3次元動作情報のデータをクラウドデータベースに蓄積し、AIによる機械学習・深層学習を用いた運動障害疾患患者の動作情報の解析を進めることで、パーキンソン症状やその他の神経症状を自動判定できる診断補助アルゴリズムの構築に応用できる。

そして、専門医以外でも、本システムを用いて3次元オンライン診療を行った際に、複合現実空間に神経疾患の症状の情報を表示し、それを参考に診察することができるようになることが期待できる。

*1 オンライン診療:医師-患者間でICTを通して、患者の診察および診断を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムに行う行為
*2 パーキンソン病:進行性の運動障害を来たす神経変性疾患。対症療法のみで、根治治療法は開発されていない。進行とともに歩行が障害され、遠距離の病院通院が困難となる。
*3 遠隔医療:情報通信技術(ICT)を活用した健康増進、医療に関する行為。
*4 UPDRS-III:MDS-Unified Parkinson‘s Disease Rating Scale part 3(パーキンソン病の運動症状を評価する国際標準スケール)。
*5 級内相関係数: ある評価の評価者間における評価の一致度や信頼性を示すための指標。


[原著論文]
本研究はMovement Disorders誌のオンライン版で(2020年9月14日付)先行公開された。
タイトル:Holomedicine-Proof of the Concept of Interactive Three-dimensional Telemedicine
タイトル(日本語訳):ホロメディスン-双方向性三次元遠隔医療の概念実証
著者:Satoko Sekimoto, MD, PhD*1), Genko Oyama, MD, PhD*1,2), Shinji Chiba, PhD*3), Maierdanjiang Nuermaimaiti*1), Fuyuko Sasaki, MD*1), Nobutaka Hattori, MD, PhD*1,2)
著者(日本語表記):関本智子*1)/大山彦光*1、2)/千葉慎二*3)/ヌルマイマイティ・マリダン*1)/佐々木芙悠子*1)/服部信孝*1、2)
著者所属:順天堂大学大学院医学研究科神経学*1)/順天堂大学大学院医学研究科共同研究講座神経変性・認知症疾患共同研究講座*2)/日本マイクロソフト株式会社*3)
DOI:10.1002/mds.28249
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mds.28249

関連先リンク:http://www.juntendo-neurology.com/

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