フィリップス・ジャパンは9月30日、プレスセミナーを開催した。これは世界のヘルスケアリーダを対象とした意識調査レポート「Philips Future Health Index 2025 日本版」の発行を記念して行われた。
開会の挨拶では、代表取締役社長CEO ジャスパー・アスエラス・ウェステリンク氏が、同社理念や事業領域、今後の展望に述べ、意識調査レポートについて解説した。
今回のセミナーでは、レポートのメインテーマであるAI医療の普及推進における同社の取り組みの説明とともに、災害時医療に携わる専門家によるパネルディスカッションを行った。
<パネラー>
植田 信策 氏(日本赤十字社 医療事業推進本部 参事監):■災害時医療について
成瀬 友彦 氏(春日井市民病院 院長):■春日井市民病院のBCP対策
門原 寛 氏 (フィリップス・ジャパン ダイアグノシス事業部):■Philips製品の災害医療への貢献
※モデレータ:岩田 潤 氏(フィリップス・ジャパン 公共政策部長)
本パネルディスカッションは、被災経験病院の体験を踏まえて、病院のBCP対策、地域連携、スタッフ確保、インフラ整備における課題とDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用に焦点を当て議論がなされた。
パネリストらは、平時からの地域内のネットワーク作りが有事にも生きるという認識を共有した。植田氏は、画像診断などの共同利用を進めるためには、予約システムや結果を地域に返すためのシステムを共有し、標準化することが不可欠であると指摘。
また、共同利用の導入にはコストがかかるため、一つの病院がすべて負担するのは困難であり、資金提供の仕組みが望ましいとした。
成瀬氏は、地域連携システムを構築し、近隣の医師が当院の医療機器を利用でき、カルテや記録も閲覧可能な体制を整えているが、災害時には当院にかかっていない患者が多く、マイナンバーカードを用いた全住民の薬剤状況把握などが望ましいと課題を挙げた。
また、有事には救急車の搬送が1ヶ月以上経っても続くため、地域内の基幹病院同士の連携が重要だが、現在はまだ連携ができていない状況を今後の課題とした。
植田氏は、震災時に近隣のクリニック医師が徹夜で応援に来てくれた経験を挙げ、平時の関係性として作っていくことが災害に活かせると強調し、機関病院は医療圏全体をサポートすべきだと述べた。
成瀬氏は、災害時におけるDXの必要性を強く示した。災害時、本部での情報整理や意思決定に時間がかかるという課題に対し、春日井市民病院ではGoogleフォームやLINEを活用して院内の被害状況や職員の安否情報を瞬時に収集している。
さらに、AI解析を導入し、集まった情報を緊急度・重要度に応じて分類し、対策の提案に役立てることで、意思決定までの時間を約20分短縮した実績を紹介した。このAI解析は、既存のツールを利用して院内でメンバーを募り、開発した。
LINEの位置情報送信機能を利用し、職員の現在地(病院中心2km圏内など)を把握することで、参集人数の調整や指示出しを可能にしたという。
門原氏は、医療機器メーカの最大の役割は災害後の医療機器の復旧であるとし、大きな震災の経験から、復旧の優先順位付けとアナログな人員配置が重要だと述べ、遠隔で機器の稼働状況や故障状況が把握できる技術を活用し、早期復旧を目指していくとしている。
インフラ確保の重要性についても議論された。春日井市民病院では、電力は3~4日分を確保し、水については地下水を利用し院内使用水の約8割を井戸水で賄うことで、災害時も安定供給を可能にしてる。
また、震災時に病院への患者集中を防ぐため、平時から医師会・薬剤師会と協定を結び、震災時に薬剤師が医師の処方箋なしで継続調剤できる仕組みを整えている。
地上系ネットワークの断線を想定し、低軌道衛星(スターリンクなど)を利用した非地上系ネットワークの整備と、院内全域でのWi-Fi利用可能な環境を整える予定だとも述べた。
門原氏は、災害時のインフラ備えとして、ヘリウムフリーMRIが非常に重要であると強調。ヘリウム不要で、現場での復旧や遠隔地からの状態確認が可能であるためだ。
植田氏は、在宅酸素患者など、企業の垣根を超えた情報共有と電源供給などのサポートが必要であると述べ、被災後の健康被害(高血圧など)の管理においては、家庭血圧データを大学などが管理し、異常時に近くの病院へアラートを出す遠隔システムの事例を紹介した。
最後にモデレータは、議論を通じて、標準化と平時からの十分な備え、そしてDXプラス遠隔の取り組みが、災害医療に貢献していくという確信を述べ、パネルディスカッションを締めくくった。
・問い合わせ
株式会社フィリップス・ジャパン
https://www.philips.co.jp/
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