2025年3月19日、オランダに本社を置くヘルステックカンパニーである株式会社フィリップス・ジャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:ジャスパー・アスエラス・ウェステリンク、以下 フィリップス)は、慶應義塾大学 医学部 放射線科学教室 教授 陣崎雅弘先生、浜松医科大学 医学部 放射線診断科 教授 五島聡先生、ロイヤルフィリップス 治療・診断部門チーフ・メディカル・オフィサーのアトゥール・グプタを迎え、プレスセミナーを開催した。
本プレスセミナーでは、「日本の医療が抱える課題、その解決策としてのAI活用の進展と課題」と題し、医療におけるワークフロー改善や医療従事者のワークロード軽減を目的としたAI搭載の医療機器の導入やDXの推進について、パネルディスカッションを行った。
医療従事者の人材不足や、長時間労働といった日本の医療業界が直面する課題を、AI技術やデジタルツールによる医療DXを通じてどのように解決できるかについて議論し、医療分野におけるフィリップスの長期的な事業展開と、日本市場への深いコミットメントを示す場となった。
●日本の医療課題:
高齢化により慢性疾患や複雑な疾患の患者数が増加しており、放射線科では診断が必要な画像データ量が急増しスタッフ不足が大きな課題となっている。また、医療費の負担も増加している。
●AIとDXの活用:
フィリップスは、AI技術を組み込んだ画像診断補助ソフトウェアやクラウド型読影支援で診断精度向上や業務効率化を実現。病院のワークフロー改善を目指している。
●今後の方向性と課題:
・高齢化社会や医療費増加への対応としてAI活用や地域医療のデジタル化が必要。
・AIは診断を完全に代替できないが、効率化と負担軽減に貢献。
・保険適用やコスト面の課題が依然として存在。
【イベント内容】
イベントの冒頭では、フィリップス・ジャパン プレシジョン・ダイアグノシス事業部長である門原寛より、現在の日本の医療における課題と、その課題解決のための一助としてのAIの活用について、フィリップスの製品における具体例を交えて紹介した。
●日本の医療が抱える課題
・循環器科や神経科などの臨床分野で複雑な疾患を持つ患者が40%増加 [1]
それにより、画像診断の必要性と画像データの量も60%増加 [1]
・スタッフ不足:放射線科医の45%が燃え尽き症候群を報告 [2]
・医療費の負担増:コストと生産性のプレッシャーに直面
●フィリップスのAIソリューション
・MRI検査: 検査準備、撮像の高速化、定量化、生体同期、読影支援、装置管理まで幅広くAIを統合
・CT検査: AIによる検査の自動化、ノイズ低減、低被ばく撮影、冠動脈の動きの抑制
・心エコー検査: 3Dデータの自動解析、ルーチン計測の自動化
●フィリップスによる具体的な成功事例
・Smart Reading(日本薬機法未承認): クラウド型AI読影支援アプリケーション。ゼロクリックでMRIの画像をクラウドに転送し、AIによる読影支援を行い、PACS等に自動で転送するシステム。
・CT 5300: AI機能を搭載した全身用X線CT装置。画像再構成の速度と質感の向上、低被ばく撮影の実現。
・EPIQ / Affiniti: 超音波画像診断装置。3Dデータの自動解析により診断精度が向上。
次に、慶應義塾大学 医学部 放射線科学教室 教授 陣崎雅弘先生、浜松医科大学 医学部 放射線診断科 教授 五島聡先生、ロイヤルフィリップス 治療・診断部門チーフ・メディカル・オフィサーのアトゥール・グプタを迎えたパネルディスカッションでは、世界や日本の医療課題と医療現場におけるAIの導入に焦点が当てられた。
●日本の現場の課題とAIの可能性
陣崎教授は、日本が直面する特有の医療課題について説明し、病院の収入が増えている一方で、人件費や公共料金の上昇により支出が収入を上回っていることに注意を促した。また、また、多くの病院が2024年には赤字になる見込みであると述べた。
1. 病院経営の現状
コロナ禍では政府の補助金によって支えられていたが、補助金終了後に物価高、人件費、電気代の高騰が経営を圧迫。収入増加を試みているが、支出が収入を上回り、多くの病院が赤字に直面。
2. 医療人材の不足と効率化
・高齢化に伴い、医療を支えるスタッフの減少が懸念され、効率化が求められる。
・特に医師以外のメディカルスタッフ不足が深刻で、対策が必要。
3.保険診療の限界
・保険診療は収入が固定的で支出の増加に対応できない構造的問題がある。
・予防医療や自由診療へのシフトが進む可能性。
・厚労省も混合診療の規制緩和を検討。
4. AIとITの役割
・人手不足解消や経営改善を目的にAIやITの活用が進められている。
・特に画像診断のAIは限界が指摘されているが、検査効率の改善には有効。
・AIの「モノタスク性※」や想定外の所見への対応力不足が課題。
(※多くのAIは、特定のタスクを効率的に処理するために開発されており、それ以外のタスクには対応することが難しいとされる。)
●放射線分野・画像診断領域におけるAIの活用:AIと人間が協力する「AI with 人間」がカギ
五島教授は、OECD諸国の中で人口あたりのCTおよびMRI装置数が最も多い [3]日本のユニークな状況について説明し、同時に放射線科医が深刻に不足しているという問題もある点を強調した。
1. デジタル化とDXの取り組み:
AI技術やディープラーニングが臨床現場に実装されており、業務効率化に貢献。ただし、大きな進展は単純タスクの効率改善に留まる。
2.画像診断とAIの活用:
・AIを用いた画像診断は保険診療要件に組み込まれつつある。日本は世界に先駆けてAI導入を進めている。
・AIは診断時間を短縮するが、最終的な報告書作成など人間が行う作業の負担は依然大きい。
3.電子カルテと情報共有:
厚労省が全国的な電子カルテ情報共有サービスを推進し、患者情報の効率的な管理と共有を目指す。これにより、遠隔地の診療や医療費管理にも大きなメリットがあると期待されている。
4.課題とAIの限界:
AIが診断医と完全に代替することは困難。むしろAIと人間の協力関係(AI with人間)が重要。文書作成などの作業負担を軽減するAIの活用が模索されている。
●医療分野におけるAI導入・活用に向けての課題
アトゥール・グプタは、現在使用されているさまざまなAI技術について発表し、MRIスキャンを300%短縮するSmartSpeed、アルツハイマー病の検出のためのAIツール、自動患者位置決めシステムなどを紹介した。さらに、遠隔地向けの小型超音波技術や母体ケアについても議論した。
陣崎教授は、医療分野におけるAIの実装が保険適用やコスト効果の面で課題に直面していることに言及した。多くのAI画像診断ツールはPMDA(医薬品医療機器総合機構)によって承認されているものの、保険適用がないため使用されておらず、病院にとって経済的負担となっているようである。
五島教授は、放射線科におけるAIの現状を詳しく述べ、2020年からAI支援の診断ソフトウェアを必要とする画像診断管理追加システムが導入されていると言及した。彼は、日本がこのような保険に基づく制度を導入した最初の国であることを強調した。
パネルディスカッションでは、日本の高齢化社会や2040年問題に関連する医療提供の将来の課題についても触れた。陣崎教授、五島教授らは、これらの課題に対処するために、より広範な地域医療の調整やデジタル変革が必要であると強調した。
開催概要
■日時:2025年3月19日(水)13:00~14:45
■開催内容・登壇:
1. ご挨拶およびフィリップスのAIソリューションについて
登壇者:株式会社フィリップス・ジャパン プレシジョン・ダイアグノシス事業部長 門原寛
2. パネルディスカッション
「日本の医療が抱える課題、その解決策としてのAIやDXの活用の進展と課題」
登壇者:ロイヤルフィリップス チーフ・メディカル・オフィサー アトゥール・グプタ
慶応義塾大学 医学部 放射線科学教室 教授 陣崎雅弘先生
浜松医科大学 医学部 放射線診断科 教授 五島聡先生
[1] 3 Key market trends source: The Burden of Chronic Disease (Karen Hacker); The healthcare data explosion (RBC Capital Markets); Radiologist burnout (Catalina imaging)
[2] The Philips Future Health Index 2024 Report
[3] OECD公式データ(2020年)
販売名:全身用X線CT装置 CT 5300
医療機器認証番号:306AFBZX00013000
設置管理医療機器/特定保守管理医療機器/管理医療機器
販売名:超音波画像診断装置 EPIQ/Affiniti
医療機器認証番号:225ADBZX00148000
特定保守管理医療機器/管理医療機器
▪問い合わせ
株式会社フィリップス・ジャパン
https://www.philips.co.jp/
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