2022.11.10
コニカミノルタ株式会社(以下 コニカミノルタ)は、九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野の石神康生教授、山崎誘三助教、循環器内科学分野の阿部弘太郎講師らの研究グループがコニカミノルタのデジタルX線動画撮影(DDR:Dynamic Digital Radiography)を利用して造影剤を使用せず肺の血流動態を可視化する技術を開発し、その研究成果が放射線科領域では世界的に最も権威ある学術雑誌の一つである「Radiology」に掲載されたことを発表した。なお、本研究グループにはコニカミノルタも参加している。
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、肺動脈内に血栓が慢性的に形成され、肺血流が障害される国内患者約4,000人の希少疾患である。
無治療ではきわめて予後不良であるが、カテーテル治療や外科的治療により予後が劇的に改善することから、早期診断することがきわめて重要である。
CTEPHをいち早く見つけ出すため、肺換気/血流シンチグラフィ*1による肺血流評価が推奨されているが、高価な大型装置、被ばく検査時間の長さから検査数は制限されており、肺血流障害を早期に評価する簡便な医療機器の開発が医療現場で望まれている。
デジタルX線動画撮影による肺血流イメージングは、単純X線撮影と同様の装置を用い、わずか数秒の息止めで撮影でき、肺の血流分布を評価できる。
被ばく量も、国際原子力機関の定める胸部X線写真正面像+側面像の基準よりも少なく低侵襲に撮影が可能である。
今回、九州大学大学院医学研究院とコニカミノルタの研究グループは、この肺血流イメージングにより、造影剤や放射性核種を用いることなく、肺血栓塞栓症を示唆する血流分布異常の検出と、動画像もしくは胸部単純X線写真内の異常所見を合わせて評価することで、肺血栓塞栓症の診断を行う胸部X線動態撮影システムを構築した。
CTEPHの検出における有用性を、既存の肺高血圧症50例のデータを用いて、放射線科専門医の読影によって後ろ向きに検証したところ、感度97%、特異度86%、診断精度92%と高い診断能を呈し、CTEPHスクリーニング*2のためのfirst choiceとして位置付けられている肺換気・血流シンチグラフィ*1と、ほぼ同等の診断結果が得られることが確認された。
胸部X線動態撮影システムが、造影剤や放射性核種を使用せず、簡便に使用でき、より低被ばくであるCTEPHの新たな診断手法となる可能性を世界で初めて証明した。
今後、胸部X線動態撮影システムの感度・特異度を評価する多施設共同での治験を行い、その有用性がさらに明らかになれば、CTEPHの早期診断が可能となり、早期治療につながることが期待される。
また、早急な検査・診断を要する急性肺血栓塞栓症の患者、造影剤の使用が困難なアレルギー患者や妊婦などに有効な新たな診断手法となる期待がもたれる。
DDRは、パルスX線の連続照射で撮影したX線画像の連続表示により動画像を作成する技術である。
DDRにより得られた動画像に、視認性向上や生体構造物の動きの定量化を目的とした画像処理を加えることで、従来の静止画では得ることが難しいより多くの情報をX線検査の段階で提供できる。
また、DDRはCTなどに比べて低線量で撮影することができ、初期の段階の検査における診断精度向上とともに、病変の早期発見と患者の負担軽減に寄与できると考えている。
学術誌名:Radiology
学術誌発行元:Radiological Society of North America (RSNA、北米放射線学会)
論文名:Efficacy of Dynamic Chest Radiography for Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension(肺高血圧症患者における慢性肺塞栓症の診断検査としての胸部X線動態撮影の有効性)
主な執筆者:九州大学大学院医学研究院
臨床放射線科学分野 教授 石神 康生
臨床放射線科学分野 助教 山崎 誘三
循環器内科学分野 講師 阿部 弘太郎
コニカミノルタ株式会社
ヘルスケア事業本部開発企画部臨床開発グループリーダー 福元 剛智
掲載日:2022年11月8日(オンライン公開日)
掲載URL :https://pubs.rsna.org/toc/radiology/0/0
DOI:https://doi.org/10.1148/radiol.220908
▪問い合わせ
コニカミノルタ株式会社
https://www.konicaminolta.com/jp-ja/
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