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2022.06.06

日本メドトロニック、組織表面温度制御によるアブレーションを実現 「DiamondTemp™アブレーションシステム

  1. カテーテルアブレーション(RFCA)
  2. 心房細動

日本メドトロニック株式会社は、薬剤抵抗性を有する再発性症候性の発作性心房細動、および通常型心房粗動治療を目的とした「DiamondTemp™アブレーションカテーテル(以下、DTAカテーテル)」の製造販売承認を2021年8月26日に取得、また2022年4月1日より保険収載され、5月より販売を開始した。

販売名:DiamondTempアブレーションカテーテル/承認番号:30300BZX00240000

 

心房細動は、日本国内では100万人超※1、世界で3,700万人以上が罹患している最も一般的な不整脈疾患である※2

心臓の4つに分かれた部屋のうち、「心房」と呼ばれる上の2つの部屋で生じた異常な電気的興奮により引き起こされる疾患で、心房が痙攣したように不規則に震え、拍動数が速くなることで血液を送り出せなくなり、心房内に血栓ができやすくなる。形成された血栓により、脳梗塞や心不全、認知症などの発症リスクが高まることが知られている※3~7

心房細動の治療には、薬物治療とカテーテルアブレーション治療がある。カテーテルアブレーション治療は、心房細動の根治を目指す治療法として、薬物治療の効果が十分に発揮されない患者や、患者の症状に応じて検討される。

カテーテルと呼ばれる細い管を脚の付け根から血管(静脈)を通じて心臓に入れ、心房細動の原因となる不規則な電気信号の発生部位を焼灼すること(アブレーション)で、異常な電気信号の流れを遮断する治療法である。これにより、症状を軽減し、生活の質を向上させることが期待されている。

カテーテルアブレーション治療には、主に高周波電流(Radiofrequency: RF)を用いて焼灼する方法と冷却剤を用いて冷凍焼灼する方法がある。RFを用いて焼灼する方法では、加熱により心筋組織に焼灼層を形成し、異常な電気信号を遮断する。

そのため、治療効果を推察する上で、組織表面温度をリアルタイムで観察できることの重要性が提唱されてきた。しかし、従来品では技術的な課題により実現することができず、十分な治療効果を得られない可能性があった。

本品は、組織表面温度による制御モードで作動する、RFを用いたアブレーションカテーテルである。カテーテル先端に、化学的に合成された (CVD: Chemical Vapor Deposit) ダイヤモンド(以下、CVDダイヤモンド)が使用されている。

このCVDダイヤモンドの熱拡散率は、従来の高周波アブレーションカテーテルで使用されている素材(プラチナ/イリジウム合金)と比較して200~400倍高い※8ため、カテーテル先端に熱がこもりにくくなる。

その結果、組織表面温度のリアルタイム測定を実現した。さらにその情報に基づく出力の自動調整を可能にした。これにより、カテーテル先端の心筋組織への接触状況に依存することなく、均質な治療効果を得ることが期待できる※9

また、CVDダイヤモンドによって、効率よく組織表面を冷却できるため、術中に要する生理食塩水量も低減できる。

こうした特徴により、抗不整脈薬非投与下における心房性不整脈再発率の低減、およびアブレーション中に要する生理食塩水量を低減できることが、DIAMOND-AF試験※10によって確認されている。

国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 不整脈科 部長 草野研吾先生は、次のように述べている。

「組織表面温度を測りながらアブレーションを行うことは、直接的な治療効果の推測が可能となるため、高周波アブレーション治療の黎明期から望まれてきたことです。

DTAカテーテルでは組織表面温度測定が可能となり、安全性および有効性の向上が期待されます。また、術中に要する生理食塩水量が低減されるため、心不全や透析を要する腎不全患者さん、ご高齢の患者さんに対して有用な治療選択になり得ると考えます。」

超高齢社会を迎え今後もその患者数が増加すると言われている心房細動に対し、メドトロニックは、診断、マネジメント、そして治療と多面的に取り組み、健康に暮らせる社会の実現を目指し貢献していく。

カテーテルアブレーションとは

カテーテルアブレーションは、カテーテルと呼ばれる細い管を脚の付け根から血管(静脈)を通じて心臓に入れ、心房細動の原因となる不規則な電気信号の発生部位を焼灼すること(アブレーション)で、異常な電気信号の流れを遮断する治療法である。

心房細動の根治を目指す治療法として、薬物治療の効果が十分に発揮されない患者や、患者の症状に応じて検討される。

カテーテルアブレーションは、使用するエネルギー源によって、高周波電流を用いて焼灼する方法と冷却剤を用いて冷凍焼灼する方法に分けられる。

高周波電流を用いたカテーテルアブレーションでは、安全性と有効性の向上を目的とし、生理食塩水を灌流することで組織表面を冷却することのできる、イリゲーション機能付きのカテーテルが広く普及している。

また、カテーテルの形状も大きく2種類あり、先端に金属の電極がついた電極カテーテルと、先端に小さな風船が付いたバルーンカテーテルがある。

DIAMOND-AF試験とは

DIAMOND-AF試験は、DiamondTempアブレーションシステムの安全性および有効性を確認するために実施された前向き、多施設共同、単盲検、1:1無作為化対照の治験である。

米国、欧州、カナダの23施設において実施された。薬剤抵抗性を有する再発性症候性の発作性心房細動患者を対象に、本品と他製品のアブレーション向け循環器用カテーテルを用いてアブレーションを施行し、術後12ヵ月間のフォローアップを行った(本品群:n=239 vs. コントロール群:n=243)。

本試験の結果、主要有効性・安全性評価項目の達成(術後12ヵ月時点の心房性不整脈非再発率:本品群=79.1% vs. コントロール群=75.7% (p<0.001 vs. -12.5% noninferiority margin)、抗不整脈薬非投与下における心房性不整脈非再発率:本品群=59.4% vs. コントロール群=49.4% (p=0.03)、有害事象発生率:本品群=3.3% vs. コントロール群=6.6%(p<0.001 vs. 6.5% noninferiority margin))が確認されるとともに、副次評価項目の結果から、効率よくアブレーションを実施できること(総RF通電時間:本品群=17.9±8.1分 vs. コントロール群=29.8±14.0分(p<0.001)、1ポイントあたりのRF通電時間:本品群=14.7±5.3秒 vs. コントロール群=32.6±25.3秒(p<0.001)、イリゲーション水総投与量:本品群=332.2±120.8ml vs. コントロール群=785.2±351.5ml(p<0.001)、最大出力:本品群=52.9±2.1W vs. コントロール群=34.3±5.4W(p<0.001))が報告された※9

※1 Ohsawa M et al. J Epidemol. 2005; 15(5): 194-196.
※2 Fuster, et al. Journal of the American College of Cardiology. 2006; 48: 854-906.
※3 2011 ACCF/AHA/HRS Guidelines for the Management of Patients With Atrial Fibrillation
※4 脳卒中データバンク2009
※5 Santhanakrishnan R, et al. Circulation. 2016; 133: 484-492
※6 Bunch TJ, et al. J Cardiovasc Electrophysiol. 2011; 22(8): 839-845
※7 Chen LY, et al. J Am Heart Assoc. 2018 Mar 7; 7(6): e007301
※8 Brown A, Marco S. Introduction to Heat Transfer. 3rd ed. McGraw Hill; 1958. AND Eckert ERG, Drake RM. Heat and Mass Transfer. Cited in: Holman JP. Heat Transfer. 9th ed. McGraw Hill; 2002
※9 Verma A. et al. Arrhythmia and Electrophysiology. 14(7): e009541.
※10 Kautzner J, et al. J Am Coll Cardiol Clin Electrophysiol. Published online January 27, 2021.

▪問い合わせ
日本メドトロニック株式会社
http://www.medtronic.co.jp/

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