日本メドトロニック株式会社は、徐脈性不整脈の治療に用いられる「Micra™(マイクラ)経カテーテルペーシングシステム」(以下、Micra AV)の製造販売承認を2021年7月29日に取得し、同年12月1日に保険収載された。今回、2022年1月より販売を開始した。
心臓の電気的系統に異常が生じ、規則正しい心臓の動きや脈拍が乱れてしまう状態を不整脈という。なかでも、脈が遅くなる徐脈性不整脈(徐脈)では、血液が全身に届かなくなる時間が生じることで、めまいやふらつき、動悸、失神などを起こす。
徐脈の主な原因として、房室(ぼうしつ)ブロックや洞不全症候群(どうふぜんしょうこうぐん)という病気がある。
房室ブロックは、心臓を収縮させる電気信号の伝達が房室(心房と心室)間で損なわれることで、脳や全身に必要な血液が十分に行きわたらなくなり、意識を失う、または生命にかかわるような状態となる場合もある。
国内の患者数はおよそ年間24,000人といわれており、何らかの疾患の影響や自然な老化現象により出現することから、今後も増加が見込まれている。
房室ブロックを有する患者に対して、心房と心室の両方を監視して電気信号を発するデュアルチャンバ型のペースメーカを用いて、心臓の正常なリズムを回復させ、心房と心室の電気的活動を調整する治療が行われている。
従来型のペースメーカは、上胸部、鎖骨下の皮下に本体を植え込み、リードと呼ばれる細いワイヤーを使用して心臓に繋げ、電気信号を送っている。
しかし、リードの断線、リードを留置する静脈の閉塞、ペースメーカ本体を植え込んだ胸部の皮下ポケットの感染症などの合併症が問題とされていた。
2017年に上市された日本初のリードレスペースメーカであるMicra経カテーテルペーシングシステムは、右心室に留置されるシングルチャンバ型であり、心房と心室の両方を監視できる製品の導入が望まれていた。
Micra AVは、同社の従来型ペースメーカの10分の1のサイズで、本体とリードが一体化されたカプセル型のペースメーカである。
心室内から心房の動きを検出する独自のアルゴリズムを備えており、心房の動きに合わせて心室を収縮させることで、より正常な心臓収縮の動きに近い生理的なペーシング療法を提供する。
また、Micra AVはカテーテルを用いて直接心臓内に送り込み、右心室内に植え込む。皮下にリードや外科的なポケットを必要としないため、それに関連する潜在的な合併症がないほか、外見からはデバイスが植え込まれていることがわからない。
Micra AVの承認は、加速度計ベースの心房センシングアルゴリズムの安全性と有効性を評価したMARVEL 2[Micra Atrial TRacking Using A Ventricular AccELerometer(心室加速度計を使用したMicra心房トラッキング)]試験のデータに基づいている。
主要評価項目を満たし、アルゴリズムによる房室同期ペーシング中に、停止やペーシング誘発性頻拍の発症は認められなかった※。
杏林大学医学部付属病院の循環器内科教授であり、Micra TPS国際共同治験の運営委員会のメンバーである副島京子氏は、「ペースメーカは、約60年の歴史の中で、小型化やペーシング技術の向上、MRI対応、遠隔モニタリングなど、大きく進歩してきました。
2017年から日本でも使用可能になった初めてのリードレスペースメーカであるMicra経カテーテルペーシングシステムは、皮下ポケットやリードによる生活制限がないといったメリットがあり、多くの患者さんの生活の質の向上に寄与してきました。
ペースメーカの概念―皮下に本体があってリードが静脈を介して心臓内に留置される―を変えるものでした。
Micra AVでは心房に同期して心室ペーシングを行うことができるため、より多くの患者さんがリードレスペーシングの恩恵を受けられることが期待されます」と述べている。
カーディアックリズムマネジメント&ダイアグノスティックス バイスプレジデント 芳賀聡氏は、「1975年に設立された日本メドトロニックは、これまで45年余に渡りペースメーカを日本の患者さんへお届けしてきました。
その間、植込み型心臓デバイスにおける数多くのイノベーションを実現し、新たな機能を提供して参りましたが、このたびMicra AVの販売開始により、日本の患者さんに新たな技術を搭載したリードレスペースメーカをお届けできることをうれしく思います」と述べている。
ペースメーカは、徐脈性不整脈に対する治療機器である。ペースメーカは心臓を24時間監視しながら、必要に応じて人工的に電気を発し、心臓の働きをサポートする。
ペースメーカには、心房と心室の両方を監視して電気を発するデュアルチャンバ型、どちらか一方を監視して電気を発するシングルチャンバ型がある。Micra AVは右心室内に直接留置されるデュアルチャンバ型のペースメーカである。
Micra TPSは、右心室でのペーシングのみを必要とする患者向けのリードレスペースメーカである。
大きなビタミン剤に相当するサイズで、従来型ペースメーカの10分の1を下回るサイズであるにもかかわらず、低侵襲なアプローチによって患者に高度なペーシングテクノロジーを提供する。
Micra TPSは、カテーテルを用いて直接心臓内に送り込み、小さなフックで心壁に取り付けられ、先端にある電極を通じて、心臓の脈拍を調整する電気刺激を送る。
従来型ペースメーカとは異なり、Micraは皮下にリードや外科的なポケットを必要としないため、それに関連する潜在的な合併症がないほか、外見からはデバイスが植え込まれていることがわからない。重さ1.75g、0.8ccにまで小型軽量化された。
※ Steinwender C et al: Atrioventricular synchronous pacing using a leadless ventricular pacemaker: Results from the MARVEL 2 study. JACC Clin Electrophysiol 6(1): 94-106, 2020
MARVEL 2試験(n=75)は、房室同期ペーシングを実施するために、MARVEL 2アルゴリズムを既存のMicra VRにダウンロードした多施設IDE試験である。対象患者群は、持続性心房性不整脈のない房室ブロックを有し、Micra VRを植え込んだ患者である。正常な洞調律を有し、完全房室ブロックの患者において、安静時20分間の房室同期ペーシング率をホルター心電図検査で確認することおよび、Pauseおよび心拍100bpmを超える不適切なトラッキングが生じないことを確認することを目的とした。アルゴリズムのダウンロード試験は、フィージビリティ試験中の5時間までに制限し、Micra VRに対する電池寿命の影響が生じないようにした。主要評価項目の結果として、正常洞調律を有し、完全房室ブロックを発症した患者 (n=40) における安静時の房室同期率の中央値は94.3%であり、VVIペーシングと比較して、平均房室同期率が26.8%から89.2%に増加した。また正常洞調律を有し、完全房室ブロックを発症した患者の95% (40名中38名) で70%以上の房室同期ペーシング率を実現し、LVOT-VTIで測定した拍出量の改善率は8.8%(n=39)であった。
▪問い合わせ
日本メドトロニック株式会社
https://www.medtronic.com/jp-ja/
2025.09.02
2025.08.27
【Ubie株式会社】戸畑共立病院、「ユビー生成AI」活用で月間約400件の診断書作成時間の50%削減を実現~生成AIを活用したコメディカル主導のDXで、人員減でも業務継続が可能に~
2025.08.22
2025.08.19
Smart Opinion、AIで乳がん検診を革新!AI乳がん検診「Smaopi(スマオピ)」開始―医師の診断をAIで支援し、より確実な乳房超音波(エコー)検査を実現―
2025.08.19
富士フイルム、AI技術*1の活用で検査ワークフローの効率化に貢献 手軽に持ち運べる携帯型X線撮影装置の新モデル 新開発~在宅医療のほか、山間部・離島など幅広いシーンで簡便なX線検査をサポート~