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2021.04.16

富士フイルムと国立がん研究センター、「AI開発支援プラットフォーム」を共同開発

  1. AI(人工知能)
  2. 協業・提携・共同開発
  3. 支援ソフト(システム・アプリ)
カテゴリ
協業・共同研究
情報提供元
富士フイルム株式会社/国立研究開発法人国立がん研究センター※a/国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)※b

 

発表のポイント

・富士フイルムと国立がん研究センターは共同で、医師がAI技術を開発できる研究基盤システム「AI開発支援プラットフォーム」を開発した。

・本「AI開発支援プラットフォーム」では、臨床現場で使われている画像診断環境に近い操作感で効率的かつ直観的に画像の閲覧やアノテーション※1ができるなど、高度な工学的知識がなくても※2、学習データの作成から学習の実行・評価までの一連のAI開発プロセスが実行できる環境を提供する。

・今回の成果により、AI技術を活用した画像診断支援技術の研究開発の加速が期待される。

・今後、二者共同で「AI開発支援プラットフォーム」の研究活用と有用性の検証を進め、富士フイルムが製品化を目指す。

概要

富士フイルム株式会社と国立研究開発法人国立がん研究センターは、プログラミングなどの専門知識がなくても医師や研究者が自身で画像診断支援のAI技術(ソフトウェア)を開発できる「AI開発支援プラットフォーム」を共同で開発した。

一般的に、画像診断支援AI技術を開発する際には、複数のツールを活用して、AIに学習させるためのデータを多数作成し、どのような学習方法で学ぶかの学習モデルを設計のうえ、学習を実行する。

現状では、一般に普及しているアノテーション・ツールは医用画像に最適化されておらず、その後の学習過程においても個別のツールを使いこなす必要があるなど、一連の開発プロセスを実行するには、高度な工学的知識が必要である。

本プラットフォームに搭載された機能を利用することで、これまで画像診断支援AI技術の研究開発に要していたAI開発を行うためのソフト・ハード両面での環境構築、学習モデルの設計に必要な高度な工学的知識の習得が不要となり、また多数の学習データ作成のための加工(アノテーション)および管理に医師が費やしていた膨大な時間を削減することができる。

これにより、臨床現場で多くのニーズや期待がありながら、上記のようなさまざまな障壁があったAI技術の活用に研究機関や医療機関が取り組みやすくなり、画像診断支援AI技術の研究開発の加速が期待できる。

今後、国立がん研究センター内の複数の研究テーマで、本プラットフォームの研究活用と有用性の検証を進め、富士フイルムが製品化を目指す。

研究背景

AI技術の一手法である深層学習技術を活用した医用画像の診断支援技術は、社会実装が始まっており、臨床現場のさまざまなニーズに応えるため、研究機関や医療機関、企業による研究開発が広く進められている。

一方で、高精度なAI技術を開発するにあたっては、良質な学習データを医師が加工(アノテーション)する必要があり、膨大な時間がかかる。

加えて、学習データの作成・管理から学習モデルの設計、学習の実行・評価まで、一連の開発工程にかかる高度な工学的知識の習得が障壁となっており、医師のAI技術開発を支援するソリューションが求められている。

国立がん研究センターは、研究所と中央病院が連携し、国立研究開発法人科学技術振興機構による戦略的研究推進事業の一環として2016年より「人工知能を用いた統合的ながん医療システムの開発」プロジェクト、2018年より「人工知能技術を活用した革新的ながん創薬システムの開発」プロジェクト(いずれも研究代表者:浜本 隆二)に取り組んでいる。

本プロジェクトで得た臨床データ構造化のためのアノテーション・プラットフォームに関する成果をもとに(研究課題責任者:小林 和馬)、富士フイルムが画像診断システムで培った高度な画像編集のノウハウ、DGX※3の性能を最大限に利用した3次元画像向けAI開発技術を生かして、国立がん研究センターと富士フイルムが共同で、画像診断支援AI技術の統合的な開発環境として「AI開発支援プラットフォーム」を構築した。

図1:「AI開発支援プラットフォーム」のコンセプト
画像診断支援AI技術の一連の開発工程を効率的に支援し、高度な工学的知識がなくてもAI技術を開発することが可能になる。

「AI開発支援プラットフォーム」の特長

「AI開発支援プラットフォーム」は、医師がAI技術を用いた臨床支援技術(ソフトウェア)の研究開発に活用できるさまざまな支援機能を提供する。

医用画像の診断支援技術の開発には、多数の学習データの加工(アノテーション)・管理、学習モデルの設定および学習の実行、といったプロセスを繰り返し行う必要がある(図1)。

本プラットフォームは、臨床現場で使われている画像診断環境に近い操作感で効率的かつ直観的に画像の閲覧やアノテーションができるなど、高度な工学的知識がなくても、学習データの作成から学習の実行・評価までの一連のAI開発プロセスが実行できる環境を提供する。

1. プロジェクト管理機能

AI開発プロジェクトごとに、学習データの収集、アノテーションの定義、アノテーション作業の進捗、学習計画・履歴、AIエンジン性能等を一覧表示・管理することでAI開発プロジェクトの推進を支援する機能である(図2)。

図2:プロジェクト管理のダッシュボード画面

2. アノテーション機能

臨床現場で使用される富士フイルムの読影システム「SYNAPSE SAI viewer」※4、診断ワークステーション「SYNAPSE VINCENT」※5と同様の画面デザインや操作性を提供し、直感的な操作で効率的なアノテーションが可能(図3)。

複数同時並行でアノテーションが行われることも想定したシステムとなっており、開発チームで大量の正解データを効率的に加工するための管理機能も搭載している。

図3:アノテーション・ツール
2次元および3次元での領域編集を効率的に行うことができる。

3. 学習管理機能

学習のスケジューリング、学習モデルの管理など、AI開発に必要な情報を一元管理できる。本プラットフォームには、国立がん研究センターと富士フイルムが医用画像向けに開発した複数の学習モデルを搭載しており、適宜そのモデルを調整することが可能である。

また、学習済みのAIエンジンのバージョン管理機能や、学習データと評価データの一括閲覧機能、学習の進捗状況をグラフィカルに可視化する機能(図4)など、煩雑な情報を直感的に管理できるユーザインタフェイスを搭載している。

図4:学習の進捗状況の可視化画面
AI開発支援プラットフォームに組み込まれた学習モデルを直感的な操作で選択し学習を実行できる。グラフ(横軸が学習の回数、縦軸が性能指標)から、学習プロセスの進行状況を確認することができる。この図では学習の回数が増えるに従い、損失関数(開発したAIエンジンによる出力結果と正解データの差を評価する指標(黄緑))が下がっている一方でDiceスコア(開発したAIエンジンによる出力結果と正解データの一致度(緑))が上がっていて、一定のレベルに達し安定していることから、十分学習できていることが確認できる。

4. AI実行およびAI技術により駆動するアノテーション支援機能

学習済みのAIエンジンを用いたテスト結果をプラットフォーム上で即座に表示・試行できる(図5)。また、そのテスト結果を新規データのアノテーションに活用できる。

特に臓器の認識や腫瘍などの関心領域の抽出を可能にするセグメンテーション機能の開発においては、新しい画像に対して、開発途中の学習済みAIエンジンを使って抽出した領域に編集を加えることで、効率的にアノテーションを進めることができる。随時再学習を行うことで、より効率的なAIエンジンの開発が期待できる。

図5:学習済みのAIエンジンを適用した結果の表示画面
本プラットフォーム上で、即座に確認することができる。

研究費

1.科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)
研究領域「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」(研究総括:栄藤稔)※注1
研究課題「人工知能を用いた統合的ながん医療システムの開発」
研究代表者:国立がん研究センター研究所 医療AI研究開発分野 分野長 浜本 隆二

2.科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業AIP加速PRISM研究 ※注1、2
研究課題「人工知能技術を活用した革新的ながん創薬システムの開発」
研究代表者:国立がん研究センター研究所 医療AI研究開発分野 分野長 浜本隆二

※注1 文部科学省の人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト(AIPプロジェクト)の一環として運営。
※注2 本事業は、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)「新薬創出を加速する症例データベースの構築・拡充/創薬ターゲット推定アルゴリズムの開発」の一環で行うもの。

学会発表(予定)

■日本医学放射線学会総会
2021年4月16日(金)15:50 ~ 16:30
演題名:Developing Doctor-in-the-loop Platform for Exploiting Medical Data in Hospital

【用語解説】
※1 アノテーション:画像データなどに正解情報(たとえば領域を囲むなど)を付与する等の加工を行うこと。
※2 ただし、本プラットフォームが提供する学習モデルに限ります。学習モデル自身を新たに設計する場合、プログラミングの知識が必要になります。
※3 DGX:NVIDIA社が提供するディープラーニング用スーパーコンピュータ。富士フイルムは自社に導入し、自社製品開発に活用しています。
※4 販売名:画像診断ワークステーション用プログラム FS-V686型
認証番号:231ABBZX00028000
※5 販売名:富士画像診断ワークステーション FN-7941型
認証番号:22000BZX00238000

関連先リンク:
AI開発支援プラットフォームについて※a:03-3542-2511
JST事業について※b: 03-3512-3526
E-mail:
AI開発支援プラットフォームについて※a: kazumkob@ncc.go.jp
JST事業について※b:crest@jst.go.jp

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