富士フイルム株式会社は、上部消化管の内視鏡検査時に胃腫瘍性病変※1や食道扁平上皮癌※2が疑われる領域をリアルタイムに検出し、胃がん・食道がんの早期発見をサポートする内視鏡診断支援ソフトウェア「EW10-EG01」について、薬機法※3に基づく医療機器製造販売承認(薬事承認)を取得した。
「EW10-EG01」は、内視鏡診断支援機能「CAD EYE(キャド アイ)」※4の上部消化管病変検出機能を提供するソフトウェアで、AI技術を活用※5して開発された、上部消化管領域の内視鏡診断を支援する医療機器として、日本で初めて※6承認されたものである。
今回の承認により、「CAD EYE」の対象領域が従来の下部消化管から上部消化管まで広がる。なお、本ソフトウェアは2022年内に発売予定である。
日本のがん統計※7によると、胃がんは、部位別のがんの罹患数・死亡数ともに第3位の癌である。また、食道がんにおいては、5年相対生存率が41.5%で、胃がん(同生存率66.6%)や大腸がん(同生存率71.4%)と比べて低い状況である。
初期のがんであれば、内視鏡手術や外科手術で切除できる可能性が高いことから、内視鏡検査で早期発見し、早期に治療に繋げることが非常に重要である。
しかし、早期の胃がん・食道がんの病変は、サイズが微小なケースや形状が平坦なケースがあることから発見が難しい、という課題がある※8。
同社は、この課題の解決に向けて、波長の異なる複数の光の発光比率を変えて臓器の粘膜表層の微細な血管や構造などを強調して表示する機能「BLI」※9や、画像の赤色領域のわずかな色の違いを強調して表示する機能「LCI」※10などの画像強調機能を用いて、炎症の診断や微小な病変の発見をサポートする内視鏡システムを提供してきた。
さらに、胃がん・食道がんの早期発見をより強力にサポートすべく、胃腫瘍性病変や食道扁平上皮癌が疑われる領域をリアルタイムに検出する内視鏡診断支援ソフトウェア「EW10-EG01」を開発。今般、薬事承認を取得した。
本ソフトウェアは、病変が疑われる領域を検出すると、対象領域を枠(検出ボックス)で囲って表示するとともに報知音を発して、医師による検出を支援する。
同社は、2020年に「CAD EYE」の第一弾として、大腸内視鏡検査におけるポリープなどの病変検出および鑑別を支援するソフトウェア「EW10-EC02」※11を発売した。今後、「EW10-EC02」に「EW10-EG01」を加えて、「CAD EYE」の対象領域を従来の下部消化管から上部消化管まで広げていく。
同社は、「CAD EYE」を用いた診断支援のほか、AI技術を活用して開発した、大腸内視鏡の検査レポート作成を支援する機能も提供している※12。
今後も、内視鏡診断のワークフロー全体を支援するAIソリューションの提供により、検査の効率化と医療の質の向上、人々の健康維持増進に貢献していく。
▪製品名:ソフトウェア
▪販売名:内視鏡検査支援プログラム EW10-EG01
▪承認番号:30400BZX00217000
機能拡張ユニット「EX-1」に、「CAD EYE」の上部消化管病変検出機能を提供するソフトウェア「EW10-EG01」をインストールして使用。
「EW10-EG01」は、同社内視鏡システム「ELUXEO 7000システム」※13、「LASEREO 7000システム」※14、「6000システム」※15の上部消化管用スコープでの検査時に使用することができる。
「EX-1」には、上部消化管用の「EW10-EG01」・下部消化管用の「EW10-EC02」の両ソフトウェアをインストール可能。
内視鏡が食道内に入ると同時に検出支援を開始。食道扁平上皮癌が疑われる領域を検出すると、リアルタイムにモニタ上の対象領域を枠(検出ボックス)で囲って表示するとともに、報知音を発する。
また胃内でも、胃腫瘍性病変が疑われる領域を検出すると、検出ボックスと報知音を発出。医師に対して視覚・聴覚で注意喚起することによって、医師が画像を解釈し病変を検出することを支援する。
医師は、袋状の臓器である胃の検査では、内視鏡を曲げたり反転させたりしながら、胃の内部にある臨床的な特徴を有する複数の主要部位(ランドマーク)を観察している。
その観察をサポートする機能として「ランドマークフォトチェッカー」を新たに開発した。「ランドマークフォトチェッカー」は、胃の内視鏡検査中に静止画像を撮影すると自動的に作動。
あらかじめ設定されたランドマークの静止画が撮影されると、モニタに出ている胃のイラストに撮影完了箇所が表示される。本機能により、胃内全体が適切に観察・静止画撮影されているかを医師が、より意識・確認しやすくなることが期待される。
食道ではBLI観察およびLCI観察モード時に、胃では白色光およびLCI観察モード時に、病変検出機能が自動で起動。内視鏡側で拡大操作などの追加操作を行わずに、動画の中で本機能を使用することが可能。
また、本機能を使用しない時は、スコープスイッチで簡便にOFFにすることができる。さらに、既設の内視鏡モニタ上に検出結果を表示するため、「CAD EYE」専用のモニタを設置する必要はなく、検査中の医師の視線移動を抑制する。
内視鏡システムとの連携を考慮した設計を施し、日常の検査ワークフローに溶け込む操作感を追求。医師の負担抑制を目指した。
※1 早期がんやがんの前段階(前がん病変)を含む、一般に切除する必要があると考えられる病変を腫瘍性病変という。
※2 細長い管状の臓器である食道の壁は多層構造になっており、一番内側の粘膜上皮から発生するものが扁平上皮癌。国立がん研究センターの食道がん組織型分類によれば、日本人の食道がんのうち90%以上を占める。
※3 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)。
※4 「CAD EYE」は、当社がAI技術を用いて開発した、内視鏡におけるコンピュータ自動診断支援(CAD)機能の総称。
※5 AI(人工知能)技術のひとつであるディープラーニングを設計に用いた。導入後に自動的にシステムの性能や精度が変化することはない。
※6 AI技術を活用して開発された、上部消化管領域の内視鏡診断を支援する医療機器として日本初。JAAME(公益財団法人 医療機器センター)Webサイトをもとに当社調べ。2022年9月22日時点。
※7 国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」。
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
※8 以下(a)~(c)論文より。
(a) Hosokawa O et al: Difference in accuracy between gastroscopy and colonoscopy for detection of cancer. Hepato-gastroenterology 54: 442-444, 2007
(b) Toyoizumi H et al: Ultrathin endoscopy versus high-resolution endoscopy for diagnosing superficial gastric neoplasia. Gastrointestinal Endoscopy 70: 240-245, 2009
(c) Menon S et al: How commonly is upper gastrointestinal cancer missed at endoscopy? A meta-analysis. Endoscopy International Open 2: E46–E50, 2014
※9 「Blue Light Imaging」および「Blue LASER Imaging」の略。
※10 「Linked Color Imaging」の略。
※11 販売名:内視鏡検査支援プログラム EW10-EC02、承認番号:30200BZX00288000
※12 大腸内視鏡検査中に取得した一部情報を当社内視鏡情報管理システム「NEXUS(ネクサス)」に自動で転記し、検査レポート作成の負担を軽減するソフトウェア「AR-C1」を販売中。
※13 販売名:光源装置 BL-7000、認証番号:227AABZX00041000
販売名:プロセッサー VP-7000、届出番号:14B1X10022A0V014
販売名:電子内視鏡 EG-760R、認証番号:227AABZX00053000 など。
※14 販売名:光源装置 LL-7000、認証番号:228AABZX00112000
販売名:プロセッサー VP-7000、届出番号:14B1X10022A0V014
販売名:電子内視鏡 EG-L600WR7、認証番号:228AABZX00068000 など。
※15 販売名:プロセッサー EP-6000、認証番号:230AABZX00025000
販売名:電子内視鏡 EG-6600R、認証番号:230AABZX00030000 など。
▪問い合わせ
富士フイルム株式会社
メディカルシステム事業部 内視鏡システム部
TEL:03-6447-1164
https://www.fujifilm.com/jp/ja
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