2014年1月号
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映像情報メディカル 2014年1月聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニック 放射線科はじめに 乳腺領域におけるマルチモダリティ診断の有用性は以前より知られており、MMGや超音波、造影MRIを用いた総合的な画像評価は日常臨床の中で定着している。乳房MRIの撮像件数は増加傾向でその内容としては従来の術前広がり診断、化学療法前、中間、後の治療効果判定、ハイリスク群のスクリーニング等多岐にわたる。一方、乳腺領域においてソナゾイド造影剤が2012年8月に保険適応となり、血流評価の新たなモダリティとして認知されている1)。乳癌は基本的に多血性腫瘍であり造影剤を用いた検査は重要であり術式決定の上でも術前に病変の分布を正確に評価することは必須といえる。また、近年サブタイプの解析を考慮した術前薬物療法の頻度も増加しつつある。 本稿では乳房MRIの適切な撮像方法の紹介や術前化学療法後の効果判定について乳房造影MRIと造影超音波を対比した症例を提示しその有用性について述べる。乳房造影超音波と造影MRIによる乳癌化学療法後の効果判定 第73回東海総合画像医学研究会での講演では、術前化学療法後の効果判定ついて乳房造影超音波と乳房造影MRIを対比して検討した。造影超音波はソナゾイドを用いて検査を行う。MRIで用いるガドリニウム造影剤との違いはガドリニウム造影剤が血管透過性による血管周囲間質のpoolingなどを反映しているのに対して、ソナゾイドは基本的に血管内に存在する造影剤を検出する。限られた撮像範囲内でリアルタイムに観察できるのが特徴である。症例提示1)症例1 症例は40歳代女性、右乳房に腫瘤を自覚し来院。マンモグラフィで右D領域に不整形の腫瘤を認めた。通常の超音波検査で不整形の低エコー腫瘤を認め、針生検で浸潤性乳管癌の診断がつき、術前化学療法が施行された。画像について解説を加える。化学療法前の造影MRIでは右D領域にリング状造影効果を有する腫瘤性病変を認める(図1a)。化学療法後の造影MRIでは腫瘤は限局性に縮小し、径約5.0mm程の造影結節として描出されている(図1b)。化学療法後の造影超音波所見では、縮小した低エコー域内に濃染像を認めた(図1c)。また、同部位はBモードで低エコー域として描出されている(図1d)。手術が施行され縮小した病変内には管内病変の所見が見られた。本症例の場合、管内病変周囲には血流を示唆する血管構造が見られ、造影MRIでは同部位にガドリニウム造影剤が流入し限局する造影効果をきたしたことが予測される。造影超音波でも縮小した低エコー域に濃染像を認めたことより同部位に血流の存在が示唆された。本症例のように病変が著明に縮小した場合でも病変部に血流が伴う場合はいずれも造影効果の描出を認める。2)症例2 症例は50歳代女性、検診にて異常を指摘された。マンモグラフィで右M領域に局所的非対称性陰影を認めた。超音波では右C領域に径38×32×27mm大の不整形の低エコー腫瘤を認め浸潤性乳管癌が示唆された。針生検で浸潤性乳管癌と診断され術前化学療法が施行された。画像について解説を加える。化学療法前の造影MRIでは右C領域に内部不均一な造影効果を呈する腫瘤性病変を認める(図2a)。化学療法後の造影MRIで腫瘤は著明に縮小し造影効果は不明瞭東海総合画像医学研究会講演論文集第74回印牧義英―造影超音波から乳房MRIについて―最新の乳腺画像診断

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