2014年1月号
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Vol.46 No.1【シンポジウム】死後画像診断(Ai)の現状と将来特別企画久保田)全国的に見て、Aiを行う際の費用負担はどうなっているか。私の地域では警察が遺族から検査費用を取り、支払いに充てている。私どもとして心苦しいものを感じてしまうが、全国的にはどのようになっているのか?高橋)警察が遺族から費用を取って、それを病院に渡すというケースは初めて聞いた。新潟市民病院では、以前から救命救急医が死因究明のためにCTを撮ってきたが、費用は持ち出しだ。現在、警察は事件性のあるものについては画像診断を行った後に警察から費用が支払われるシステムがある。新潟市民病院では、新潟県警と協議し、県警が事件性ありと判断した場合は、事務にそのCT撮影の代金が支払われる。久保田)全国的にそういう方向で検討されているのか。今井)委員会では検討しており、問題は話にあった地域間格差である。都道府県によってまったく異なる。やはり国として1つの方向性でいきたい。この費用負担に関しては最もホットなところで、かなり細かく議論されおり、ある程度の方向が決まると思う。先ほど池田先生から出た一般病院での感染症対策は、先生の施設ではどのようにされているのか?高橋)新潟市民病院では、救急外来に搬送されて亡くなった患者さんが対象のほとんどで、亡くなってしまった前か後かというのはあるものの、救急外来を受診した患者さんとまったく同じ扱いで撮っている。今井)いわゆる行政解剖になるような事案とは違うわけだ。池田)いくつかの会社から、死体専用の収納ケースが出ているが、活用の度合いは?高橋)まったく使っていない。わりと高価である。吉田)死後画像に関心がある。当院の法医学教室では死後画像は現在まだ導入されていないが、個人的に法医学教室に週1回顔をだし、解剖を含めた勉強をさせてもらっている。法医学業界の雰囲気として、いまだ死後画像に懐疑的な先生も少なくないという印象をもっており、飯野先生のようなお立場はむしろマイノリティのように感じているが実際のところはどうか。良い機会なので率直なところを知りたい。飯野)先生がおっしゃる通りかもしれない。たしかに、世代にもよる違いはある。池田)この議論はいつも起こる。法医学者が死後画像と解剖を決して比較しているわけではない。ただし、飯野先生もおっしゃったように、法医学が扱う死後画像には、死後変化というものがあり、独特の部分がある。その分野については法医学者の中には、死後変化まで画像で正確に捉えられるのかと疑問を呈する向きもある。だからある程度のエビデンスを作ることが必要だ。当初は古いご遺体、あるいは疑問のあるご遺体については画像を撮った後に解剖して対比する。ある程度対比がうまくいって、エビデンスが整えば、解剖しなくてもいいだろうと私は考える。ただそれに馴れてしまうと、裁判上の証拠になる恐れがあり、法医学者が出廷を求められることがある。場合によっては放射線科の先生も出廷の可能性はある。こういう画像があれば、このような解剖所見になるから、これは解剖しなくても診断がつくというエビデンスがしっかりあれば、われわれは何でもかんでも解剖をしようということにはしない。ただ、特に裁判出廷は裁判員裁判になってから多くなった。3会場質問者: 久保田 元 (対馬いづはら病院 放射線科)会場質問者:吉田真衣子(杏林大学 放射線科)

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