大動脈の離断、そして椎体の離断なども解剖で確認され、同僚が本人を掘削機械と建物とのあいだに挟み付けてしまって起きた事故と判明した。現場の状況のふれこみと死後CTの所見があまりにも乖離していたことから、最初は行政解剖に回り、途中から司法解剖に変更された。その結果、業務上過失致死で同僚の男性は逮捕された。③救急外来の異状死(公衆衛生)大酒飲みの50代男性が朝に血を吐いてトイレで倒れているところを発見され、心肺停止状態で搬送された(図3)。このような現病歴からは、アルコール性肝硬変、食道静脈瘤の破裂、吐血といった経過が思い浮かぶが、死後CTを撮ったところ、気道内腔に大量の血液が充満しており、左の上葉に壁の厚い空洞を認め、結核を疑った。解剖により結核が確認され、結核によるラスムッセン動脈瘤の破裂、喀血から窒息死したと考えた。画像所見によるスクリーニング情報を解剖医にも与えることができ、結核診断確定後すぐに保健所に届けられた。④警察の検視60代の男性がコンバインで納屋に移動後、心肺停止状態で発見されたとのこと。前医で撮影された死後CTを見ると矢状断の頸椎の配列には異常はない。当院でもう一度、解剖前に死後CTを撮ったところ、第6頸椎が脊柱管内へ突出していた。第5、第6椎間板レベルで断裂があるのではないかと疑いMRIを撮ったところ、椎間板の断裂と、椎体前面と棘突起背側の血腫、そして頸椎髄の損傷をMRIで描出できた。解剖でもそのとおりであった。警察からの検死に関しては、死後CTを撮影したあとに警察の検死官、剖検センターの法医学医と、放射線科医の私が読影室に集合し、検視・検案所見や画像所見を総合的に判断して、死因や解剖の必要性を合議で決定している。過去の死因究明は、検視・検案から解剖という流れしかなかったが、今後は検視・検案後にとりあえず画像診断図3 結核a) 死後CT:左肺の空洞(矢印)b) 解剖:結核性空洞(矢印)図2 事故a) 外表面:すり傷のみ(矢印)b) 死後CT:肝臓の亀裂(矢印)c) 解剖:割れた肝臓図2a図2b図2c※出典:塩谷清司ほか: Aiを考えるにあたって. 映像情報メディカル 45(4)付録: 2-5, 2013映像情報メディカル 2014年1月図1 致命的な頭部外傷外表面(a)は正常に見えるが、頭蓋骨(b)はひどく骨折している。a
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