2014年1月号
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5映像情報メディカル 2014年1月池田)まず山本先生に第三者機関としての立場からということでお話しいただく。山本先生は、千葉大を卒業され、現在はAi情報センターの代表理事、それから日本Ai学会の理事長である。私は厚生労働省や日本医師会の検討会等でご一緒させていただいた。山本)私は第三者機関であるAi情報センターという独立専門機関がどのように活用されるか、なぜ必要なのかについてお話させていただく。第三者機関がなぜ必要かということについては、“納得”という言葉がキーワードになると考えている。当然、遺族の方が愛する方の死に納得することであり、医療従事者が自分たちの医療行為に納得することでもある。その検証のための材料の1つとしてAiがあると私は認識している。医療過誤について考えると、患者が死亡するという特別のイベントは多くの場合、手術に関連している。この手術から死亡までの間に輸液や輸血をし、また再手術をして医療従事者は何とか患者さんを助けようと医療行為を続ける。事故が起きたときに異状があったはずだが、解剖では、なかなかそれがわからない。その理由は、司法解剖するまでに、時間が1日以上経過し、死後変化や救急蘇生措置が加わった段階で解剖になるため、事故当時に何が起きたか確認するのがとても困難であるからだ(図1)。それを補うものとして役に立つのがAiである。AiはCTやMRIによる画像診断であり、一般的に術前あるいは術後といったさまざまなタイミングで必ず行っている検査と同じものである。同じモダリティで比較できることが一番の強みで、その画像は誰もが見ることができる。つまり後から監査できるのである。最近、Aiがどれくらい解剖に近づいてきたか、論文が出ている。外傷性変化については86%の一致率である。診療関連死というのは基本的には手術でメスを使う侵襲的な行為であり、外傷に含まれるので、9割方わかるのである。逆に“Aiをやって何もなかったら、それは診療関連死ではない”といえる。最近、医療機関からの死亡事故報告が増えてきているが、全部が全部、医療事故というわけではない。私たちは患者さんを助けようとして最善を尽くしており、医療事故でないことを証明するためにもAiをやらなければならない。そのときに何が必要かというと、“客観的な陰性所見、negative findingを提示する”、これが司法と闘うときに重要になる。死因究明法は2012年6月に公布され、警察管轄の死因・身元調査法と、死因究明推進法の2法が動き出した。推進法は必要な体制を整備していくための基本法だが、2年間の時限法であり、もう残り1年を切ってしまったため、早く枠組みを作らなければならない。厚労省も死因究明にAiが必要だとは認識しており、読影技術向上研修、Aiシステム整備事業などいくつか予算立てをしている。来年、児童の虐待に対していくつかの地域でモデル事業としてAi実施が予定されている。そのとき、われわれは当然お手伝いをするが、一般医療機関にもAiモデル事業への参加をお願いすることになるだろう。各施設でも実際に死後画像診断を取り入れるところが増えている。Ai情報センターにも「読影依頼」が増えた。いくつか実例を紹介する。病院の医療安全管理室の方から「Ai実施にはどうしたら山本正二Ai情報センター特別企画【シンポジウム】死後画像診断(Ai)の現状と将来第三者機関としての立場から

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