名古屋大学 放射線科*1/名古屋大学大学院医学系研究科 医療技術学専攻医用量子科学講座*2/名古屋大学 脳神経外科*3/名古屋大学 中央放射線部*4/市立四日市病院 放射線科*5はじめに トルコ鞍や鞍上部など、傍鞍部領域は解剖学的に複雑である。発生する病気も多岐におよび、腫瘍、感染症、炎症、血管病変などが発生する。これらの病変の多くは、臨床症状や、内分泌学的所見、放射線学的所見が互いに類似していることがあり、鑑別診断が容易ではない。診断は総合的に行われ、神経学的所見、内分泌学的所見、眼科的所見が必須である。画像診断は、正常解剖の同定や、この領域に発生する病理組織を推定するのに役に立つ1)。傍鞍部腫瘤の画像診断はMRIが本質的であるが、今回われわれは、当院にて傍鞍部腫瘤に対し18F‐FDG-PETと11C‐Methionine(MET)PETを施行した5症例(Sarcoid-osis, Langerhans cell histiocytosis, Germinoma, Craniopharyngioma, Pilocytic astrocytoma)のPET所見を報告する。症例 当院にて傍鞍部腫瘤に対しFDG-PETとMET-PETが施行された以下の5症例を対象とした(表1)。症例1:26歳男性主訴:口渇・多尿診断:Sarcoidosis症例2:33歳男性主訴:記憶障害診断:Langerhans cell histiocytosis症例3:13歳女性主訴:頭痛・口渇・多尿診断:Germinoma症例4:62歳女性主訴:視力低下1)方法 PET cameraはHEADTOME V(Shimadzu)を使用した。薬剤を静注後スキャン開始し、FDGは5分×12フレーム撮像し、画像評価は9〜12フレームを使用した。METは2分×20フレーム撮像し、画像評価は11〜20フレームを使用した。画像評価は3名の放射線科医(A.M., Y.O., T.N.)により行った。2)所見(図1〜3) MRIでは5症例とも造影T1強調像で造影効果を示すものの、特異的な所見とは言い難かった。PET所見は、Langerhans cell histiocytosisでFDG、METのいずれも強い集積を示した。SarcoidosisではMETは前頭葉白質よりやや強い集積を示し、FDGは白質より強い集積を示した。他の低悪性度の脳腫瘍は、METは白質より強い集積を示し、FDGは白質より少し強い集積を示した。3)考察 Sarcoidosisは類上皮細胞肉芽腫が出現する原因不明の全身疾患とされ、5%の症例で中枢神経病変を認め、好発部位は視床下部、下垂体部とされている2)。MRIの所見は多彩で多発性病変、孤発性腫瘤の形成、髄膜や脳神経の増強効果を認める。中枢神経病変でのPET所見について報告は少なく、小脳虫部に発生した病変の症例報告では、病変部には小脳皮質よりやや強いMET集積、FDG集積を認めている3)。今回の症例も同様に小脳皮質より強いFDG、MET集積を認め東海総合画像医学研究会講演論文集診断:Craniopharyngioma症例5:18歳女性主訴:頭痛診断:Pilocytic astrocytomaPET診断Vol.46 No.13第74回村井淳志*1/二橋尚志*1/伊藤信嗣*1/川井 恒*1/長縄慎二*1/加藤克彦*2/藤井正純*3/若林俊彦*3/櫻木庸博*4/大河内慶行*5傍鞍部腫瘍のPET診断
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