2014年1月号
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4映像情報メディカル 2014年1月近年、生物学的製剤の登場など治療法の進歩により、関節リウマチ(RA)の進行を遅らせるための治療から関節破壊を防ぎ寛解を目指す治療が行えるようになり、早期のRA診断の確立が求められている。本稿ではRA診療におけるMRIの臨床的役割とその病的所見を解説し、病変評価における今後の課題や撮像法の工夫について述べる。関節リウマチは基本的に滑膜炎に始まる疾患である。単純X線写真は関節裂■の狭小化、骨びらん、関節周囲の骨萎縮、関節配列の乱れ、関節変形などの関節リウマチ所見を検出することができるが、これらは滑膜炎に伴う2次的な変化である。一方、MRIは炎症性滑膜を直接評価することができる。滑膜炎によって肥厚した滑膜はT1強調像で低信号、T2強調像で低〜高信号を示す。活動性の炎症性滑膜は小血管増生を伴って血流が豊富であることを反映してガドリニウム投与により強い増強効果を示すことから、造影MRI(特に脂肪抑制法を併用したT1強調像)は炎症性滑膜の描出に適している(図1)。また、MRIは滑膜炎による2次変化である骨髄浮腫を捉えることができ、骨びらんの検出能も単純X線写真に比べて優れている。骨髄浮腫はT1強調像で低信号、T2強調像で等信号、脂肪抑制T2強調像やSTIRで高信号を示す境界不明瞭な異常信号域であり、超音波検査では描出できない領域である。この骨髄浮腫は臨床的な活動の指標(CRP、DASなど)と相関することが知られており、関節破壊や関節機能の予後を予測する因子となる1)。骨びらんは骨皮質欠損およびその近傍の骨髄における限局性異常信号として認められ、造影MRIにて増強効果を示す。早期関節リウマチではMRIにより単純X線写真よりも多くの骨びらんが検出されることが知られており、MRIでは単純X線所見に先行して骨びらんが認められると考えられている2)。さらに、MRIは■滑膜炎、滑液包炎、リウマチ結節などの軟部組織病変の描出にも優れている。関節リウマチでは早期の診断確立が予後を大きく左右する。このため、滑膜を主体とする関節リウマチ病変をいち早く捉えて診断精度を向上させるとともに、進展範囲や活動性を明らかにすることが画像診断に求められる。われわれの施設では、3T MRIの関節リウマチ早期病変の検出能を知るために①手関節を含む多関節症状がある、②単純X線で手関節病変を指摘できない、③ACR分類基準を満たさない、以上の3つの条件をすべて満たした症例について高分解能3T MRIを施行した3)。対象症例についてMRI所見を評価したのち臨床症状を追跡し、観察期間中にACR分類基準を満たした早期RA群と満たさない非RA群のMRI所見をプロスペクティブに比較検討した結果、MRI施行後に関節リウマチと確定された早期RA群21例では、全例に造影後の関節滑膜の肥厚および濃染像が認められ、造影3T MRI は関節リウマチ診断の予知因子として重要な役割を果たす可能性が示唆された。また、早期関節リウマチ21例中13例(62%)で■滑膜などの関節周囲軟部組織にも造影後の濃染像があり、関節滑膜以外の軟部組織に存在する早期病巣の検出にもMRIは有用とはじめにMRIの役割と評価の課題青木隆敏産業医科大学 放射線科学教室特 集関節疾患の画像診断:変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)関節リウマチのMRIによる評価

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