2014年1月号
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特集関節疾患の画像診断:変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)近年、関節超音波は関節リウマチ(RA)やその類縁疾患の診療において広く活用されるようになった。本邦では2010年に日本リウマチ学会RA超音波標準化小委員会が発足し、学会主催の講習会が行われるようになり、関節超音波が急速に普及してきた。関節超音波は、RA患者の滑膜病変の評価を正確に行うとともに、骨変化を早期に描出することができるため、その有用性が高く評価されている。しかし、病変の描出は検者の技量(技術・理解)や機器の性能に左右される欠点もある。本稿では、画像および文献をもとに関節超音波のリウマチ診療における有用性と限界について考察し、関節超音波に関する理解の標準化を目指す。図1に関節超音波の正常像を示す。まず、関節超音波では骨表が高エコーに描出され、強いランドマークとなる。撮像に際し、図のように皮膚の上にゼリー層を残し、プローブにより関節腔や周辺組織を圧縮しないことが重要である。圧縮することで滑液や滑膜、微細な血流を過小評価する恐れがあるためである。一般的に、滑膜は無〜低エコー、滑液は無エコーに関節腔内に描出され、正常でも部位によって少量検出される。両者の鑑別点として、滑膜は圧縮性が乏しいのに対して、滑液貯留は移動性かつ圧縮性を認める。しかし、小関節においては両者の区別ができないこともある。関節超音波の最大の利点は、パワードプラ(PD)法を用いることにより、滑膜病変の活動性が評価できる点である。活動性の高い滑膜炎では、増生滑膜の新生血管を反映して滑膜内に血流シグナルを認める。超音波による滑膜炎の検出感度は、診察による評価よりも高いことが多数報告されている1〜3)。骨びらんは骨皮質の不連続として描出される。その際、切痕や溝を骨びらんと誤らないように直行する2平面で確認することが必要である。超音波による骨びらんの検出感度は、アクセスが容易な関節では単純X線よりも高いことが報告されている4)。しかし、骨髄浮腫(骨炎)など骨内部の評価は不可能であるため、必要に応じMRIを行う。図2にRA患者における典型的な関節滑膜炎の像を示す。低エコーの滑膜が増生し、関節腔が骨幹部に及ぶまで拡張している。さらに、肥厚した滑膜に一致して著明な血流シグナルを認め、活動性が高い滑膜炎であることがわかる。さらに、骨皮質の不連続部に活動性滑膜の侵食を認める。■および■■の評価も重要である。正常■組織は、線維束の規則正しい配列のため線状の高エコー像が層状に描出される(fibrillar pattern)。図3に典型的な■■滑膜炎の像を示す。■の正常なfibrillar patternが乱れ、■周囲に低エコーを呈する不整な■■滑膜の肥厚を認める。同部に著明な血流シグナルを認め、活動性が高いことがわかる。滑膜肥厚、滑液貯留、骨びらん、血流シグナルの評価には定量法と半定量法があるが、グレード0〜3の4段階による半定量法5) が広く用いられている。さらに、関節や■を動的に評価できることは超音波の特徴であり、適宜応用して追加評価する。Vol.46 No.135はじめに関節超音波で描出可能な骨・骨軟部病変川㞍真也*1、2/川上 純*2長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 社会医学講座 公衆衛生学*1/同 展開医療科学講座(第一内科)*2特 集関節疾患の画像診断:変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)関節リウマチの超音波による評価

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