Vol.46 No.1特集関節疾患の画像診断:変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)関節リウマチ(RA)の予後の改善には、できるだけ早期からRAを分類(診断)し、適切な抗リウマチ治療を導入することが必要である。RAの臨床分類(診断)基準としては2010 RA分類基準が実地臨床に浸透し、以前よりRAの早期診断は可能となってきた。RAの早期診断、治療経過および関節予後の判断におけるMRIや関節エコーの重要性は認識されていたが、本年は欧州リウマチ学会(EULAR)から、RAの臨床的マネージメントにおける関節画像の用い方に関するEULARレコメンデーションが報告された。また、合成DMARDsおよび生物学的製剤によるRAマネージメントにおけるEULARレコメンデーション:2013改訂版も発表され、RAの早期診断と早期からの抗リウマチ治療はかなり体系化されてきた。本稿ではこれらのエビデンスについて解説する。2010 RA分類基準を図1に示す。2010 RA分類基準は早期RAに焦点におき、びらん性関節炎を起こす可能性が高い慢性滑膜炎を有する患者を早期に分類し、メトトレキサート(MTX)を中心とした治療を導入することを目的に勘案された基準である1、2)。日常診療で行える診察所見と血液検査を点数化することで用いやすい基準となっているが、スコアリングする前に次の2つの条件を満たす必要がある。 まずは、1つ以上の臨床的滑膜炎(腫脹関節)があること(OAを生じやすいDIP、MTP、CMC関節を除く)である。もう1つは滑膜炎が他の疾患により説明できないことであり、すなわち、鑑別診断は重要である。日本リウマチ学会のホームページに掲載されている鑑別疾患リストや問診票(表1、図2)をもとに、スコアリングを適応する前に、RA以外の疾患で滑膜炎が惹起されている可能性を考察する。2010年RA分類基準の発表以降、その分類(診断)能の検証が1987年RA分類基準との比較により行われてきた。ライデン大学の早期RA(発症2年以内)コホートの解析では、2,258例を対象にMTX開始における感度と特異度を評価している(MTXが開始された患者がRA)。この解析では、1987年RA分類基準で感度61%、特異度74%であったのに対し、2010年RA分類基準では感度84%、特異度60%と、2010年RA分類基準で感度は明らかに向上したが、特異度が低下する結果であった3)。本邦の慶應義塾大学SAKURAコホートの解析(DMARDsが開始された患者がRA)においても同様の傾向であった4)。2010 RA分類基準はリウマトイド因子(RF)および抗CCP抗体(ACPA)(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)に重きを置かれているが(図1:正常上限の3倍で低値と高値に分類)、これら抗体が陰性の場合は分類基準を満たしにくい。また、大関節型でも点数が低く、分類基準を満たしにくい。以上より2010 RA分類基準は治療すべき早期症例を感度よく分類できる半面、特異度が低下すること、自己抗体が陰性の症例や大関節型はRAと分類(診断)されにくいことを念頭に置き、適はじめにRAの早期診断:2010 RA分類基準川上 純*1/川㞍真也*1、2/玉井慎美*1/上谷雅孝*3長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座 リウマチ免疫病態制御学分野(第一内科)*1/同 社会医学講座 公衆衛生学分野*2/同 展開医療科学講座 放射線診断治療学分野*3特 集関節疾患の画像診断:変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)早期関節リウマチの診断と治療戦略
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