2014年1月号
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図5 FAIの単純X線像A:正面像と、B:軸射像において、骨頭の側方から前方にかけてCam Deformityを認める。AはいわゆるPistol Grip Deformityの像。※文献18よりVol.46 No.1特集関節疾患の画像診断:変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)傷の原因とされていたが、近年、FAIが股関節OAの原因になりうると提唱され、世界的に注目されている。股関節の運動に伴う慢性的なインピンジが軟骨損傷を引き起こし、OAを導くという仮説であり、特に欧米では一次性OAと考えられていた症例の一部が、FAIによるOAであったと見直されるようになってきた。一方、日本ではその頻度の低さも指摘されており、Takeyamaらは2009年に、股関節OA患者946関節を後ろ向きに調査し、そのうちFAIと診断されたのは6例(0.6%)だけだったと報告している17)。ただしこの調査は手術を行った患者のみであり、手術まで至らないOA患者の中にFAIがどの程度いるのかは不明である。FAIには、大■骨頭辺縁部の骨隆起により生じるCam impingementと、臼蓋辺縁の骨隆起により生じるPincer impingement、およびその合併型がある。これらの骨形態異常について理論上はインピンジメントの原因にも結果にもなりうる。つまり骨性の不適合があるのでインピンジしたのかもしれないし、インピンジすることで骨棘および骨堤が形成されたとも考えられる。2012年にAgricolaらは、12〜19歳の男性181例(サッカー選手89例、コントロール92例)の単純X線を調査し、Cam Deformityはサッカー選手に多く存在し、High-Impact SportsがCam Deformityの形成に影響を与えると提唱している18)。つまり、まず成長期の力学負荷のために骨変形が生じ、その変形がさらに骨形態異常を助長し、最終的には軟骨損傷も引き起こす、という仮説が導かれている。Cam Deformityは、単純X線正面像では側方の隆起を表すPistol Grip Deformity、軸射像では前方の隆起を表すAlpha Angleで主に評価される(図5)。インピンジする部位は通常は側方ではないので、Alpha Angleが重要視される。Alpha Angleは2002年にNötzliらに提唱された計測法であり、本来は単純X線でなくMRIで評価されるべきである。Alpha Angleは、頸部軸に平行で骨頭中心を通るMRI斜軸位断像において、骨頭の円形状が前方で終わる点と骨頭中心を結んだ線と頸部軸の角度によって定義されている19)。その5

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