2014年1月号
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4)骨髄浮腫OAの軟骨下骨には、骨髄浮腫(Bone Marrow Lesion: BMLs)と呼ばれる、MRI脂肪抑制像(STIRやT2 FatSat)で高信号を呈する所見が認められる(図4)。骨挫傷に伴う浮腫像と考えられてきたが、組織学的には浮腫つまり細胞外液増加は必ずしも主でなく、線維化や壊死像、骨梁肥厚や骨梁骨折など、さまざまな所見が含まれている9)。また、骨髄浮腫は■痛の程度や病期の進行に関与するという報告もあるが、関与しないとする報告もある10、11)。これはおそらく、画像的に骨髄浮腫を呈している期間は短くないため、時期によって組織像や臨床像が変化していくことが理由と考えられる。2010年にCremaらは、OA1283膝のMRIによる縦断研究を行い、骨髄浮腫の発生部が骨嚢胞に置き換わると報告している12)。骨髄浮腫、骨嚢胞、骨代謝亢進、これらは互いに密接な関係をもち、OAの発症や進行に深く関与していると考えられる。DMOADsの開発は現在、再考の時を迎えている。多くの臨床治験が行われてきたが、決定的な結果はなかなか得られず、薬価や費用対効果も現実的な問題として残っている。OAはさまざまな病態を含んだ多因子疾患であり、個々の患者の病型に合わせたDMOADsの選択が、今後の1つの図2 MDCTによる股関節OAの骨微細構造解析A:高解像度条件で撮影することで、軟骨下骨梁の描出が可能である。B:健常例C:末期OA例の大■骨頭側の軟骨下骨の三次元画像。OAで骨梁の肥厚や癒合像が見られる。※文献6より映像情報メディカル 2014年1月骨梁肥厚が定量的に評価可能であった。この軟骨下骨の構造変化は、OAの前病変である臼蓋形成不全の状態では捉えられず、初期病変の検出能にはまだ限界があった。臨床用MRIは1980年代に実用化され、臨床現場に普及し、2000年代には3Tの磁場強度を有するMRIが登場した。磁場強度が1.5Tの2倍になったことより、理論上は signal noise ratio(SNR、信号雑音比)が2倍となり、同じSNRであれば検査時間は1/4となる。2008年にBolbosらは、3TMRIを用いて初期OA膝を調査し、関節軟骨のT2値、T1ρ値上昇と、軟骨下骨の骨量低下の関係を示した7)。また、2012年に筆者らは、3TMRIを用いて膝OA患者の関節軟骨量と軟骨下骨梁構造の関係を調査し、軟骨摩耗に伴う内側関節の骨硬化と外側関節の骨粗鬆症化の関係を示した(図3)8)。現在のところ、MDCTと3TMRIのいずれも、骨梁1本1本を正確に描出するだけの解像度は有してないが、今後の画像機器の進歩により、■■■■■■■骨梁構造解析の正確性は徐々に向上していくと考えられる。将来、臨床用CTおよびMRIを用いた骨微細構造解析により、OAのさらなる病態解明や、患者の病状把握、予後予測、治療の適応判断や効果判定などへ応用が可能と考えられる。

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