2014年1月号
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映像情報メディカル 2014年1月変形性関節症(Osteoarthritis:OA)は、一般的に軟骨がすり減り関節が痛くなる病気と認識されているが、現在、その疾患概念は、関節を構成する軟骨、骨、滑膜、これらすべての組織が複合的に関与する疾患と位置づけられている。これらの組織における病的変化は、OAの発症や進行、症状の発現、治療効果に至るまで、多くの面でさまざまな影響を与えている。本稿では、OAにおける「骨」の変化に注目して、その病態生理への関わりと、画像評価法について論説する。1)軟骨下骨とOAの病態近年、OAの病態における軟骨下骨の役割が注目されている。1つは発症の病態における役割である。OAは関節軟骨に過剰な力学負荷が加わることで、軟骨が摩耗する疾患と考えられてきたが、いくつかの動物実験によって、軟骨の摩耗は力学的負荷だけでは生じず、関節内組織で生成される炎症性サイトカインやタンパク分解酵素といった化学的物質を介して初めて生じるということがわかってきた1)。動物実験レベルでは、これらの物質をブロックすることで、力学負荷が存在する状態であってもOAの発症は抑制されている。これらの物質の発生源として、軟骨、滑膜、そして、軟骨下骨が挙げられており、それらの組織をターゲットとしたOAの新しい薬物療法(Disease-Modifying Osteoarthritis Drugs:DMOADs)が模索されている2)。2つめには、痛みの病態における役割である。軟骨組織には神経線維は存在せず、OAにおける痛みの原因は、骨や滑膜などの関与が大きいと考えられている。OAの軟骨下骨では、骨代謝回転の亢進や、骨芽細胞などの活性化、それに伴う前述の化学的物質の生成が確認されている。さらに、軟骨-軟骨下骨間ではそのバリアが破綻し、軟骨下骨から軟骨へ物質が伝播している可能性も指摘されている。2004年にHayamiらは、ACL切除OA発症ラットにアレンドロネートを投与し、軟骨下骨の骨代謝亢進を抑制することで、OA進行を抑制したと報告している3)。ヒトを対象にした臨床治験も行われており、2013年にReginsterらは、骨吸収抑制および形成促進作用のあるストロンチウムを用いた1683名の膝OAの治験(Strontium ranelate Efficacy in Knee OsteoarthrItis triAl:SEKOIA)の結果、関節裂■狭小と■痛の抑制を確認したと報告している4)。2)骨硬化、骨嚢胞OAの軟骨下骨は、形態学的には、骨梁が病的に肥厚した状態である骨硬化や、骨梁が消失し空洞を形成している骨嚢胞といった、骨微細構造の変化が生じている(図1)。骨梁の肥厚は、過剰な力学的負荷に骨が対応しようとして、Wolffの法則に基づいて骨が過形成されたものと考えられている。骨嚢胞の形成メカニズムは完全には解明されていないが、主に2つの仮説が提唱されてきた。1つは骨挫傷説(bone contusion theory)であり、過剰な力学負荷により骨梁に骨挫傷が生じ、同部が吸収されて骨嚢胞に置き換わるとするものである。もう1つは関節液侵入説(synovial fluid in-はじめに軟骨下骨の変化千葉 恒/尾崎 誠長崎大学医学部 整形外科特 集関節疾患の画像診断:変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)変形性関節症における骨変化の評価

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