2014年1月号
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図2 T2マッピングによる膝関節軟骨変性の評価カラーバーの赤色はT2の長い変性部位を、青色はT2の短い健常部位を示している。大■骨内側顆の荷重部を中心とした関節軟骨にT2延長が認められ、コラーゲン配列の不整化や水分含有量の増加などを伴う軟骨変性が示唆される。映像情報メディカル 2014年1月関節軟骨は約70%の水分、約20%のコラーゲン、および約10%のプロテオグリカン(proteo-glycan: PG)からなる。関節軟骨は、緻密なコラーゲン線維網中に極性分子であるPGを豊富に含有している。PGは同じ極性分子である水との相互作用により、軟骨の高い膨張圧を維持し、一方、コラーゲン線維網は膨張圧に抗して軟骨形態を保つ作用をもつ。関節軟骨はこれらの特徴的な組成、構造により、力学的負荷に対し強い耐性を有するが、一方、自己修復能は乏しく、一定以上の変性や損傷が生ずるとその自然修復は困難とされる。OAでは、初期よりPG含有量の低下、コラーゲン配列の不規則化、および水分含有量の増加などを伴う軟骨変性が認められる。最近、軟骨の組成や構造の変化などを定量的に評価可能な新しいMRI撮像法が臨床応用されつつあり、軟骨の質的評価に有用な方法として期待されている。ここでは軟骨中のコラーゲン配列や水分含有量の評価が可能なT2マッピング、およびPG含有量や水分含有量などの評価が可能なT1ρ(spin-lattice relaxation in the rotating frame)マッピングについて述べる。T2マッピングは、軟骨中のコラーゲンの配列と水分含有量が評価可能なMRI撮像法であり、早期軟骨変性の検知や軟骨変性度の定量的評価に有用とされる5)。正常軟骨は密で規則的に配列するコラーゲンを有し、また水分含有量はほぼ一定に保たれているが、軟骨変性に伴いコラーゲン配列の不整化や水分含有量の増加が進行する。これらの変化はともにT2を延長させるため、変性の進行にしがたって軟骨のT2は延長する。T2マッピングではT2計算画像を作成し、コラーゲン配列や水分含有量の違いをT2の差として定量化する。臨床診断にはT2に基づいてカラーコーディングした画像による視覚的評価を、詳細な定量的評価にはT2計算画像上に関心領域を設定したT2測定を行っている(図2)。一方、T2マッピングを用いた軟骨変性の評価では、コラーゲンの層状構造による生理的なT2の違いや、マジックアングル効果によるT2の延長をよく理解し6)。この現象に伴うT2の延長により、健常軟骨が変性軟骨と解釈されることがないよう注意を要する。T1ρマッピングは、軟骨中のPG濃度の評価が可能なMRI撮像法である7)。軟骨変性に伴って進行するPG濃度の低下、水分含有量の増加はともにT1ρを延長させることから、T1ρマッピングは早期軟骨変性の有効な指標となると考えら関節軟骨の質的MRI評価法

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