2014年1月号
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映像情報メディカル 2014年1月変形性関節症(Osteoarthritis: OA)は、関節への繰り返す微小外力や加齢に伴い生じた退行変性を基盤として発生する。一般にOAの初期に起こる変化は関節軟骨の変性であり、プロテオグリカンの減少やコラーゲン配列の不整化などが起こる。変性に伴う関節軟骨機能の低下は、軟骨自体の摩耗に加え周囲の骨増殖性変化を生じ、最終的に不可逆的な関節変形へと進行する。進行したOAに対しては外科的治療以外に有効な手段がないため、なるべく早期にOAを診断し、進行予防のための有効な対策をとることが大切である。磁気共鳴撮像 (magnetic resonance imaging: MRI)は、単純レントゲンでは評価困難な関節軟骨など軟部病変の検知が可能であり、特に骨形態変化に乏しい初期のOAの診断に有用である。近年、MRI機器やパルスシーケンスの進歩に伴い、より高い空間分解能で詳細な関節軟骨の評価が可能となった。また関節軟骨中の分子構造変化を鋭敏にとらえることが可能な新しいMRI撮像法が臨床応用されつつあり、OAの早期に起こる軟骨変性を検知できるようになってきた。本稿では、膝関節を中心に変形性関節症における関節軟骨の一般的なMRI評価法に加え、新しい形態的、質的MRI撮像法について述べる。膝関節のルーチンMRI撮像では、さまざまなパルスシークエンスが組み合わせて用いられるが、関節軟骨の評価には2D 高速スピンエコー(fast spin-echo: FSE) 法を用いたプロトン密度(proton density: PD)強調像が有用とされる。PD強調像は、縦緩和時間(T1)強調像、横緩和時間(T2)強調像の中間的な像であり、関節軟骨と関節液、および軟骨下骨との間に比較的良好なコントラストが得られる。また脂肪抑制法を併用することにより、関節液は強い高信号に、正常海綿骨は低信号に描出されるため、軟骨欠損部に存在する関節液や、剥離した骨軟骨片と骨髄との間に介在する関節液を鋭敏に捉えることができる。正常軟骨は、PD強調像およびT2強調像で等信号〜低信号に示されるが、軟骨層や関節内の部位によって差違が認められる。軟骨変性部や損傷部では、PD強調像やT2強調像で信号強度の上昇、表面不整像、菲薄化などが認められる。また軟骨病変を有する部位では、同部に軟骨下骨の不整像や、軟骨下骨下骨髄の浮腫などが認められることがある。関節軟骨の重症度評価では、一般にOuterbridge gradingなどが用いられる1)。一方、関節軟骨は薄く曲線的な構造をとることから、2D撮像による1つの撮像断面のみによる診断は病変の見落としの原因となり、またアーチファクトを病変と見誤る危険があるため2)、複数の撮像断面で病変を確認することが重要である。関節軟骨のMRI評価では、より高い空間分解能での撮像が推奨される。3T MRIでは1.5T MRIと比較し、RFコイルなどを含めた撮像条件が同一であれば理論上2倍の信号雑音比(signal to noise ratio: SNR)が得られる。SNRの向上は、空間分解能の向上や撮像時間の短縮にきわめて有効であり、特に病変が比較的小さく、複雑な形態を有する関節軟骨では、診断精度に大きく寄与すはじめに関節軟骨の一般的なMRI評価法渡辺淳也千葉大学大学院医学研究院 整形外科学特 集関節疾患の画像診断:変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)変形性関節症における関節軟骨評価

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