2014年1月号
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 MRI、CT、 超音波検査(US)が関節疾患の画像診断に広く応用されるようになり、その臨床的有用性について数多くの研究論文が発表されている。今回の特集は関節疾患のなかでも日常診療で最も遭遇することの多い疾患、変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)の画像診断をとりあげた。特にOAとRAは再生医療や生物学的製剤の進歩により、的確な早期診断、治療効果の正確な判定、予後予測が必要となり、画像診断への期待は大きい。ここでは、OAにおける関節軟骨と骨の評価、RAにおけるMRI、 USの役割、早期診断と治療戦略について、研究・診療の第一線で活躍している方々に執筆をお願いした。 OAやRAなどの関節疾患における画像診断には、関節軟骨、滑膜、軟骨下骨、■帯などの関節を形作る構造をひとつの統合されたものとして捉えることが必要である。ひとつの構造の異常は、他の構造に異常をもたらしうる。たとえば、RAにおける骨髄浮腫は、滑膜炎の活動性と関連があり、骨軟骨破壊進行の重要な因子である。またOAでは関節軟骨の障害に軟骨下骨の骨微細構造の変化や骨髄浮腫が大きく関わっている。画像診断の進歩によって得られたこれらの知見は、関節疾患の診断だけでなく、その治療戦略にも変化をもたらしている。 一方、OAやRAの標準的な画像診断は何かといわれると、やはり単純X線撮影である。単純X線撮影は標準的で再現性が高く、 X線被曝も比較的少ないことから、複数の関節の評価にも適している。これに対してMRIは撮像装置による違い、多様な撮像パラメータや撮像法により標準化が難しい。重症度の指標であるスコア化ひとつをとっても非常に煩雑で、日常臨床に応用するには手間と時間の点で問題が多い。USについても、術者の技術に依存する範囲が大きく、手技や評価法の標準化が十分とはいえない。これらのモダリティが本当に臨床応用に定着するためには、これらの課題を解決する必要がある。 画像診断が本当に臨床に生かされるためには、高度な診断装置だけでは十分でなく、関節疾患の画像診断に精通したスタッフ(技師や医師)の協力、臨床医との緊密な連携が欠かせない。この特集では、整形外科、放射線科、リウマチ科の医師に執筆をお願いした。これらの専門領域の知識や能力を結集すること、本特集がその礎のひとつにでもなれば幸いである。最後に、多忙な時間を割いて執筆をいただいた先生方に深く感謝いたします。Vol.46 No.1(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 放射線診断治療学)5臨床に生きる画像診断とは上谷雅孝序説特 集 関節疾患の画像診断:変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)

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